黒潮、ついに首都陥落
カペレナ軍、評議会の都を占領
潮見議長、陥落した臨時首都から脱出 無人のネルヴェナへ400人移住命令
【総合部】カペレナ王国軍は第133期、黒潮自治国の首都(16,12)を占領した。第129期、潮見玄吾議長が首都にとどまって徹底抗戦すると宣言して以来続いてきた都の攻防は、ついに王国軍の占領という結果を迎えた。議長は陥落した臨時首都から脱出した。首都の市街にはなお10,800人が暮らすが、黒潮の人口は前期12,900人から今期2,200人に減少。残る黒潮の住民はフィルノア1,800人、ネルヴェナ400人となった。
政府は同じ期、前期の艦砲射撃で最後の100人が死亡したネルヴェナに400人を移住させた。潮見議長は「ネルヴェナをいつまでも無人のままにしておくわけにはいかない」と移住の必要を訴えたが、フィルノアでは「まだ家も壊れたままじゃないか」「また砲撃されたらどうするんだ」と不安と批判が相次いでいる。
首都の旗、ついに降ろされる
雨の黒潮首都。評議会へ続く通りには、カペレナ王国軍の兵士が立っていた。かつて黒潮政府が掲げた旗はなく、門前の歩哨も王国の軍服を着ている。住民は建物を見上げ、足早に通りを過ぎていった。
第129期、王国は黒潮指導部が首都を放棄したと主張した。潮見議長はこれに反論し、評議会前で「私はここにいる。評議会も首都を離れていない。失った土地は必ず取り戻す」と演説した。
第130期には首都を守る黒潮軍の歩兵一部隊が王国軍との交戦で消滅。第131期には王国が北部の8割制圧を唱え、第132期には兵站基地を失った。それでも黒潮の旗は首都にあった。第133期、ついにその旗が降ろされた。潮見議長は王国軍の占領を前に臨時首都を脱出した。第129期の首都死守の誓いから4期、議長自身も都を去ることになった。
首都の10,800人、王国の支配下に
議長は脱出したが、首都の建物と住民は残った。10,800人が暮らす都市は今期からカペレナ王国領となる。通りの商人や家族にとって、支配する国が変わることは配給や商取引、暮らしの先行きに直結する問題だ。新たな行政を担う王国の対応が問われる。
無人のネルヴェナへ400人 政府が移住を命じる
ネルヴェナは第132期、カペレナ艦隊による艦砲射撃で最後の100人が死亡し、人口0となった。潮見議長は犠牲者を「ネルヴェナ百烈士」と呼んで顕彰した。それからわずか1期、同じ村に400人が移住することになった。
潮見議長は移住の理由について「ネルヴェナをいつまでも無人のままにしておくわけにはいかない。家も土地も残っている。人が住まなければ、町は荒れていくばかりだ。厳しい状況なのは承知しているが、もう一度暮らせる町にしていきたい」と述べ、400人の移住を進める方針を示した。一方、村は今も敵艦の砲撃が届く沿岸にある。家屋の修繕や避難の手だてが整わないまま、移住先で暮らし始める人々の不安は大きい。
荷物は鍋と毛布 移住者の厳しい現実
ネルヴェナへ着いた人々の荷物は少なかった。鍋、毛布、衣類、子どもの靴。雨の中、住民は壊れた家屋の前に並び、役人による住居の割り当てを待った。屋根の落ちた家もあり、商店の戸は閉ざされたままだ。
「ここ、先週まで誰もいなかったんでしょう。家だってこんなになってるし……」。毛布を抱えた女性は屋根を見上げた。「また艦砲が飛んできたらどうするんですか。逃げろって言われても、どこへ逃げればいいのか」
小さな子を連れた男性は、割り当てられた家をのぞいて言った。「ここに住めと言われたから来たけど、せめて屋根くらい直しておいてほしかったよ」。役人は名簿を読み上げ、次の家族を案内した。前期の砲撃を知る移住者たちは、港の方角を何度も振り返っていた。
フィルノアで政府批判広がる 「今度はうちの番か」
人口1,800人のフィルノアでは、首都陥落と移住政策に不安が広がっている。街は第128・129・131期に繰り返し艦砲射撃を受けた。今期は砲撃を免れたが、港の人々に安堵の色は薄い。
「ネルヴェナにまた人を住まわせるんだって? まだ家も壊れたままじゃないか」。岸壁で荷をまとめていた女性は手を止めた。「この前、あそこにいた人たちがみんな亡くなったばかりでしょう。それなのにもう別の人を連れていくなんて。せめて危なくないようにしてからにしてほしいよ」
「首都まで取られたんだろう。次はこっちが危ないんじゃないかって、みんな話してるよ。なのに政府は、ネルヴェナに人を送るんだってさ」。配給の列の男性は声を落とした。近くの住民は「移るのが嫌だって言ったら、どうなるんだろうね。うちにも小さい子がいるんだけど」と漏らした。
第129期、潮見議長の徹底抗戦演説には配給の遅れや戦争拡大を責める怒号も飛んだ。首都を失った今、住民の不満は家族をどこで安全に暮らさせるのかという切実な問いとなっている。
王国、南部戦線突破を宣言
カペレナ王国は「王国軍は黒潮臨時首都に突入南部戦線遂に突破し計画都市目前に迫る」と発表した。首都は王国領となったが、現代都市フィルノアは依然として黒潮が保持している。今期の陸上戦果は双方1,800人。黒潮の兵站基地も王国領となり、予備兵1,000人が投降した。陸戦の詳報は2面。
泰平とアルガ、戦い始まる
泰平天国とアルガリスト帝国の戦いが第133期に始まった。戦果は泰平6,600人、アルガ2,300人。3面。
なのです、南北で怪獣被害
なのです主義人民共和国の南の港をクジラ、北西の町をいのらが踏み荒らし、港と町は壊れた。両怪獣は今期末も現地にとどまっている。4面。
青海から教団へ223,200人が移住
青海共和国から狐っ娘の尻尾教団へ、仕事を求める223,200人が到着した。教団は繁栄賞、青海は災難賞を受賞した。5面。
黒潮自治国が長く恐れてきた首都陥落が現実となった。第129期、潮見玄吾議長は「私はここにいる」と首都にとどまる決意を示した。だが今期、王国軍が臨時首都を占領し、議長自身も都を脱出した。同じ期、政府は前期の砲撃で無人となったネルヴェナへ400人を移住させた。
ネルヴェナを無人のままにしておけないという議長の説明には理由がある。人が戻らなければ、家も畑も傷む。しかし前期まで艦砲が降り注いだ村に、住民の意思を顧みず人を送る政策を本紙は批判する。町を再び人の住める場所にするなら、まず安全と生活を立て直すべきだ。
本紙は前号の社説で「100人の死を悼むなら、次の100人を守れ」と訴えた。今期、その問いはさらに重くなった。ネルヴェナで新たな暮らしを始めた400人に、避難路、食料、住まい、医療、そして自ら住む場所を選べる自由が必要だ。
議長は首都から逃れたが、そこに暮らす10,800人は王国の支配下に残された。黒潮領の人口は2,200人となった。潮見議長が取り戻すと誓ったのは土地だけか。国民が安心して帰れる暮らしを取り戻すのでなければ、どれだけ旗を掲げても失地回復とは呼べまい。空き家を埋めることを急ぐあまり、そこで暮らす400人を次の犠牲者にしてはならない。






