朝刊
第132期
トレーディア新聞社
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トレーディア
新聞THE TREDIA SHIMBUN
トレーディア暦2年10月第1週
秋季
本日11面
主な記事 ネルヴェナの人口が0に 戦果1,100人対1,200人 緑丘の軍港が移る 究極繁栄賞 火災29,200人 雪は40区画 藍岬
総合ネルヴェナ1

ネルヴェナ、最後の100人全員死亡
潮見玄吾議長「百烈士」を顕彰

フィルノアを狙った艦砲、隣町に着弾 領有は黒潮のまま

雨の岸壁と、砲撃で壊れた町並み
雨のネルヴェナ。岸壁の店は閉じ、家屋は砲撃で壊れた。最後まで残った住民100人は死亡した。領有は黒潮のままである。

カペレナ王国の戦艦と巡洋艦が、黒潮自治国のフィルノアへ艦砲を向けた。着弾したのは隣町ネルヴェナ。最後まで故郷にとどまっていた住民100人が全員死亡し、人口は0となった。黒潮自治評議会の潮見玄吾議長は犠牲者を「ネルヴェナ百烈士」と呼んで顕彰し、国民に追悼声明を発した。町の名と黒潮の旗は残ったが、そこで暮らす人々は失われた。

潮見議長「100人の忠魂、永久に忘れず」

潮見議長は追悼声明で「ネルヴェナの忠勇なる国民百名は、敵艦の砲火を前にしてなお故郷を捨てず、最後の一人に至るまでその地に踏みとどまった」と述べ、全員を「ネルヴェナ百烈士」と称した。

「彼らは兵士ではない。家を守り、店を守り、祖国の土地に生きた我らの同胞である。その百の命を奪った砲火を、我々は決して忘れない。百烈士よ、安らかに眠れ。黒潮の旗あるところ、諸君の名は永久に語り継がれる」と訴え、町の再建を誓った。

第129期、同じ議長は首都の評議会前で「私はここにいる。評議会も首都を離れていない。失った土地は必ず取り戻す」と徹底抗戦を唱えた。その演説には、戦争拡大や食料配給の遅れを責める住民の怒号も飛んだ。今度は領土を取り戻す誓いに加えて、帰ることのない100人の命に応える責任を負う。

雨の町に、最後まで消えなかった灯

ネルヴェナは雨だった。荷を覆うシートから水が滴り、岸壁の店の戸は閉じられたまま。第131期にも艦砲で200人が亡くなったこの町に、なお100人がとどまった。港で商いを続けた者、家を離れようとしなかった者。それぞれが守ろうとした暮らしは、今回の砲撃で断ち切られた。

「ここで商売を始めて、ずいぶん経つ。今さら別の町へ行って何をするんだ」。かつて岸壁の商人はそう語ったという。今、その店先を訪ねる住民はいない。町に残った100人は誰一人、生きて朝を迎えなかった。

砲口はフィルノア、砲弾はネルヴェナへ

王国艦隊が狙ったのはフィルノアだったが、着弾したのはネルヴェナで、フィルノア市街への今期の命中はなかった。フィルノアでは第128・129期に各200人、第131期に400人が艦砲射撃で死亡している。黒潮の沿岸都市では、戦火にさらされる日々が続く。

砲手が標的に定めた町と、100人が亡くなった町は違う。海上から放たれた砲弾は、ネルヴェナに残されていた最後の暮らしを奪った。

無人の町、なお開拓の鍬

今期、ネルヴェナでは平地の開拓も行われた。住民を失った町の傍らで、黒潮の人々が土地を拓いたのである。議長が誓った再建の日は遠い。艦砲の届く岸辺へ再び家々を建て、人を迎えられるのか。無人の通りに残る雨音が、その問いを重くする。

黒潮、陸戦で反撃も兵站失う

カペレナ王国は「黒潮臨時首都の防衛軍壊滅、北部既に8割制圧、抵抗軍は計画都市に疎開か」と声明を出している。しかし黒潮の首都はいまも黒潮領にあり、ネルヴェナの領有も変わっていない。

陸上の戦果はカペレナ1,100人、黒潮1,200人。累計は144,900人、95,500人となった。一方、黒潮の兵站基地がカペレナ領となり、予備兵1,000人が王国側の手に渡った。中立だった山も王国領となった。陸と海の詳報は2面。

なのです、残党兵站を再び占領

なのです主義人民共和国は旧シンジケート連邦政府残党の兵站基地を占領し、予備兵1,000人を奪った。今期の戦果はなのです軍1,800人、残党軍400人。首都プライムは残党が保持している。3面で詳報。

世界初の究極繁栄賞 電都で国家奉祝大式典

なのです主義人民共和国は人口1,008,000人となり、世界初の究極繁栄賞を受賞した。首都電都の共和国記念殿堂には群衆が集まり、国家代表の祝辞と祝砲、中央大通りの旗行列、夜の提灯行列で歴史的快挙を祝った。第120期の超繁栄賞から12期で1,000,000人を達成。祝典の熱気と各地の奉祝、政府代表演説を4面で大特集。

大火で29,200人死亡

なのです主義人民共和国で14,300人、チェス=シロバキア共和国で14,900人が火災によって死亡した。仕事を求めて移住した人々はこの数に含まれない。5面。

黒潮、オリョルッルに宣戦 潮見議長「真の正義のために戦う」

黒潮自治国は今期、オリョルッル王国に宣戦を布告した。開戦は第137期の予定。カペレナ王国との戦争で都市の住民と兵站拠点を失い、兵力・物資ともに厳しい黒潮が、新たな敵を迎える決断に踏み切った。王国は緑丘公国の軍港を領有し、青海共和国との第136期開戦も控えている。詳報は6面。

黒潮自治評議会の潮見玄吾議長は宣戦に際し、百烈士への追悼とは別に声明を発した。「我が国は領土を失い、軍は傷つき、ネルヴェナの百名までもが帰らぬ人となった。勝算ばかりを数えるならば、今こそ沈黙すべき時であろう。だが、我々は沈黙しない。侵略者が力をもって国々の運命を決めようとする時、これに抗う者がいなければ、正義は地図の上から消えてしまう」と述べた。

さらに「黒潮は、真の正義のために侵略者と戦う。たとえ国土が狭まり、最後の一兵となろうとも、強き者の恣意が法となる世界を認めない。ネルヴェナ百烈士の無念を胸に、我々はなお立つ」と訴えた。

第129期の議長演説では徹底抗戦の訴えに、配給の遅れや戦争拡大を批判する怒号が交じった。新たな宣戦がその不満を静めるかは不透明だ。国民を奮い立たせる議長の言葉とは裏腹に、黒潮の守備隊には失った兵站と住民の命が重くのしかかる。

本紙社説 百烈士の死を、最後の悲劇とせよ

ネルヴェナの最後の100人は全員が死亡した。故郷を捨てずに生きた人々の最期を、本紙は深い悲しみをもって悼む。潮見玄吾議長は彼らを「百烈士」と呼んだ。その忠誠は記憶されるべきだ。だが、100人が死なねばならなかったことまで栄誉に変えてはならない。

カペレナ王国は北部制圧を唱える。だが、狙った都市の隣で最後の住民を死なせた砲撃に、誇るべき勝利はあるまい。民間人の命を奪う砲火を本紙は厳しく非難する。

潮見議長が「真の正義のために侵略者と戦う」と叫んだことには、追い詰められてなお屈しない国の悲壮がにじむ。軍港を失った緑丘、次なる戦争を控えた青海を前に、強国の膨張を黙認しないという主張には一理ある。だが、その旗を掲げる黒潮自身が今、都市を守りきれず、兵站を奪われている。カペレナとの戦争さなかに新たな宣戦を重ねる政治判断は、勇気と同じ重さで危険を引き受けるものだ。

第129期、潮見議長は「失った土地は必ず取り戻す」と誓った。ならば取り戻すべきは土地だけではない。住民が安心して帰れる暮らしである。侵略への抵抗という大義を掲げる以上、国民を犠牲にし続ける戦いへ転じてはならない。開拓者を再び同じ砲火にさらしてはならない。

国民が祖国のために死ぬことより、祖国で生きられることにこそ国家の尊厳はある。100人の死を悼むなら、次の100人を守れ。ネルヴェナ百烈士の悲劇を、最後の悲劇とせよ。

戦況黒潮戦線2

黒潮、善戦も兵站基地失う
投降兵1,000人、昨日の祖国を敵に

今期戦果は黒潮1,200人、カペレナ1,100人 領土18区画に縮小

カペレナと黒潮の戦場
カペレナ王国と黒潮自治国の戦場。艦砲の着弾はネルヴェナ、兵站はカペレナ領になった。
森の中の兵站基地
カペレナ領となった黒潮の兵站基地。倉庫の前で物資が動かされ、予備兵1,000人が王国側に下った。

カペレナ王国と黒潮自治国の戦線で第132期、黒潮軍は王国軍に1,200人の損害を与えた。王国側の戦果は1,100人。黒潮が100人上回る善戦を見せたものの、兵站基地は王国領となり、予備兵1,000人が投降してカペレナ側に下った。中立の山も王国領となり、兵力差はさらに開いた。

山岳兵に反撃、戦果は黒潮が上回る

王国の山岳兵は黒潮の歩兵に700人の損害を与え、反撃で400人を失った。黒潮の歩兵も同じ山岳兵を攻撃して800人の損害を与え、反撃で400人を失った。第131期には王国が7,600人、黒潮が1,900人の戦果を挙げていた。今期は黒潮が持ち直したが、反撃しても領土は取り戻せなかった。

兵站基地陥落 投降兵1,000人、昨日の祖国を敵に

カペレナ軍が占領したのは、黒潮軍の補充を支える兵站基地である。そこにいた予備兵1,000人は投降し、王国側に下った。昨日まで黒潮の軍服を着て前線への出動を待っていた兵士たちが、今や祖国と敵対する側に身を置くことになった。

「死ぬのが怖かった。だから銃を置いた。だが、あの町に残してきた家族に、どう顔を向ければいい」。投降した兵士の一人は故郷の方角を振り返ったという。命を永らえた安堵と、背いたのではないかという苦悩は、同じ胸に宿る。戦いに疲れ、どちらの旗の下でもよいから生きて帰りたいと願う者もいるだろう。

前線で補充を待つ黒潮兵には、1,000人が来ないこと自体が痛手である。「来るはずの兵が来ない。それだけでも痛いのに、今度は敵として来るというのか」。兵士の言葉には怒りよりも深い疲労がにじむ。

祖国を裏切ったのか。それとも死を拒んだだけなのか。軍の戦果表に載らない1,000人の葛藤を、遠くから容易に裁くことはできない。

森の守備隊全滅 同じ場所に新部隊

森では黒潮側の一部隊が全滅し、同じ週に新たな部隊が置かれた。昨日の守備兵が戻らぬ場所へ、今日また別の兵が入る。そこを守り続ける必要があるほど、前線には容易に捨てられぬ地点がある。

だが同じ場所で部隊を失い続ければ、補充の苦しさは増す。兵站基地の喪失は、こうした前線の交代と再建にも影を落とす。

中立の山も王国領 首都は黒潮が保持

中立だった山がカペレナ王国領となり、黒潮の領地は19区画から18区画へ減った。王国の領地は90区画から92区画へ増加した。山岳戦が続く地域で、重要な地形をどちらが握るかは次の攻防にも響く。

それでも首都の旗は黒潮のままである。カペレナは北部8割制圧を唱えるが、自治国の指導部と軍は抵抗を続けている。

ネルヴェナ無人化 艦砲で百烈士全員死亡

カペレナの戦艦と巡洋艦はフィルノアを狙って艦砲射撃したが、砲弾はネルヴェナに着弾。最後まで町に残っていた住民100人が全員死亡し、人口は0となった。町の領有は黒潮のままである。潮見玄吾議長は亡くなった住民を「ネルヴェナ百烈士」として顕彰した。詳報は1面。

黒潮の駆逐艦は、王国領になった兵站基地のある森へ艦砲射撃を加えた。砲撃後も基地の領有はカペレナにある。

兵力と食料も減少、苦しい継戦

黒潮の総兵力は62,500人から59,600人へ減り、カペレナ軍は144,500人から145,300人へ増えた。黒潮の食料備蓄も861,800トンから833,900トンへ減少。今期の戦果だけでは埋まらない差が広がっている。

戦況論説 戦果に勝ち、戦局に敗れる黒潮

黒潮軍は今期、敵に与えた損害で100人上回った。敵兵を倒した数で善戦しながら、兵站基地を失い、1,000人が投降し、中立の山には王国の旗が立った。戦果の数字を誇ることと、次の戦いを支える足場を守ることは別である。

潮見玄吾議長は、この劣勢の中でオリョルッル王国への宣戦を決断した。「黒潮は、真の正義のために侵略者と戦う」。その言葉には、追い詰められても屈しない国の悲壮が宿る。一方、新たな敵を迎える政治判断には、残る兵と住民の命をさらに危険にさらす重みがある。

議長は最後の一兵となっても戦うと誓った。しかし、基地で武器を置いた1,000人もまた黒潮の国民であった。生き残ることを選んだ者に、祖国への愛情がなかったと誰が言えよう。国家が兵士に忠誠を求めるなら、国家もまた、彼らを無用な死へ追い込まぬ責任を負う。

ネルヴェナ百烈士の死を悼む今、戦争の大義を掲げるだけでは足りない。失った補充の道をどう繋ぎ、これ以上の犠牲をどう防ぐのか。議長が守ろうとする正義は、その答えを伴って初めて国民を支える力となる。

今期、相手に与えた損害
今期これまでの戦果
カペレナ1,100人144,900人
黒潮1,200人95,500人
領有と兵力
兵站黒潮からカペレナへ
予備兵1,000人
中立の山カペレナ領
黒潮の兵力59,600人
カペレナの兵力145,300人
首都黒潮が保持
戦況残党戦線3

残党、兵站基地また陥落
首都プライム孤立深まる

2期続けて予備兵1,000人喪失 領土4区画に縮小 戦果1,800人対400人

なのですと残党の戦場
なのです軍が残党の兵站基地を占領。残党の領地は4区画となったが、首都プライムはなお保持している。
兵站基地の内部で箱を開ける兵士
なのです軍が占領した残党の兵站基地。内部で旗が掛け替えられ、補給の箱が開けられている。予備兵1,000人がなのです側に下った。

なのです主義人民共和国軍は第132期、旧シンジケート連邦政府残党の兵站基地を新たに占領し、予備兵1,000人を獲得した。残党軍は第131期にも兵站基地と予備兵1,000人を失っており、2期連続で後方支援の拠点を奪われた。領土は5区画から4区画に減少。首都プライムはなお保持しているが、その防衛を支える足場は狭まる一方である。

なのです軍は今期、残党軍に1,800人の損害を与えた。残党軍の戦果は400人。戦力の消耗と補充拠点の喪失が重なり、残党政府は存亡の瀬戸際に立たされている。

兵站基地、2期続けて敵手に

第131期に続く基地陥落は、ただ領土の一角を奪われたというだけの出来事ではない。そこには前線で失われた兵を補い、戦い続けるための人員を送り出す役割があった。前期に1,000人、今期も1,000人。わずか2期で予備兵2,000人がなのです側に渡った。

残党の領土は第130期の6区画から、第131期に5区画、今期4区画へ減った。「まだ首都はある。だが、その首都へ兵を送る場所が、もう幾つ残っている」。プライム近郊で補充を待つ兵士は、基地陥落の報を前にそう漏らした。

投降の予備兵1,000人 昨日の同志、今は敵軍に

占領された兵站基地では、残党側の予備兵1,000人が投降し、なのです軍の側に下った。昨日まで旧シンジケート連邦の軍服を着ていた兵士たちである。前線への出動を待ち、首都プライムを守るために召集された者もいただろう。

「ここで死んだところで、家族には何も残せない。だが、向こうの旗を見上げることになるとは思わなかった」。投降した兵士の一人は、兵站基地を去る際にそう語った。

生き延びた安堵と、同じ国のために戦ってきた仲間への負い目。昨日までの故郷への思いは、旗が変わっただけで消えるものではない。1,000人の中には再びプライムへ銃を向けることを恐れる者も、戦争が終わってほしいと願う者もいるだろう。

前線で彼らを待つ残党兵は「あの1,000人が来れば、次の攻撃にも耐えられると思っていた」と声を落とした。戦争は昨日の同志を、今日から敵同士にしてしまう。

山岳兵と装甲兵、各地で激突

残党軍の空兵はなのです軍の装甲兵に100人の損害を与えたが、反撃を受け500人を失った。なのです軍の山岳兵は残党軍の砲兵に400人の損害を与え、反撃で200人を失った。さらに、なのです軍の装甲兵は残党軍の空兵に900人の損害を与え、反撃で100人を失った。

残党軍も反撃を試みているが、今期の戦果はなのです軍1,800人、残党軍400人。累計ではそれぞれ約106,700人、約43,200人となった。なのです軍は依然、攻勢の主導権を握っている。

首都プライム、残る領土わずか4区画

残党の領土は今期末で4区画。一方、なのですは299区画から301区画へ広げた。首都プライムは依然として残党の手にある。

周辺の部隊と拠点を失いながらも、残党軍は首都を守り続ける。その背後では兵站基地が相次いで失われ、前線へ送るはずだった予備兵も敵軍に下っている。「プライムはまだ我々のものだ」。そう語る守備兵の声には、誇りと疲労がにじんだ。

なのです、1,000,000人国家の兵力を背景に攻勢

なのです主義人民共和国では今期、人口が1,008,000人に達し、世界初の究極繁栄賞を受賞した。首都電都で祝賀の声が上がる一方、プライム周辺では戦闘が続く。

共和国の人口増が直ちに前線への補充にはまだ結び付いていない。しかし領土301区画を持つなのですと、4区画を守る残党とでは、長期の戦争を支える基盤に大きな開きがある。詳報は4面。

軍事論説 旗は残れど、兵は来ず

首都プライムには、今なお旧シンジケート連邦の旗が翻っている。周囲の領土を失い、兵站基地を奪われながらも、残党軍は首都を明け渡していない。その抵抗には軍事的に評価すべき粘り強さがある。

しかし本紙は指導部に問いたい。何のために、いつまで戦い続けるのか。首都を守ることは国家の存続を守ることだ。だが、そのために必要な兵も、兵を送り出す基地も失われ続けている。わずか2期で予備兵2,000人が敵軍に下った。

投降した兵士の中には祖国を守り抜けなかったと自らを責める者もいるだろう。しかし生きるために武器を置いた兵を、ただ臆病者と呼んでよいはずがない。国家が兵士に死守を求めるなら、戦い続けられる条件を整える責任も負う。補充の見込みを失った部隊へ命令だけを送り続けるのは、軍事指導とは呼べない。

なのです軍も、首都プライムを守る兵士の抵抗意志を軽んじてはならない。攻勢だけを重ねれば、戦いはさらに長引き、双方の犠牲が増す。

首都の旗が掲げられていることと、その国の未来が守られていることは同じではない。プライムを守る兵士たちは明日も生きて戦えるのか。その戦いの先に何を残そうとしているのか。残党政府には、最後の4区画を守るための決断が迫っている。

今期、相手に与えた損害
今期これまでの戦果
なのです1,800人約106,700人
残党400人約43,200人
兵站
以前の領有シンジケート連邦
今期の領有なのです
予備兵1,000人が投降
残党の首都プライム、保持
残党の領地4区画
なのですの領地301区画
残党の領地の推移
第130期末6区画
第131期末5区画
第132期末4区画
首都プライム残党領のまま
奉祝特集世界初・究極繁栄賞4

世界初の偉業、1,000,000人の共和国
なのです、究極繁栄賞を受賞

電都に歓呼の声満つ 共和国記念殿堂で奉祝大式典、街路に旗と提灯の列

共和国記念殿堂前の奉祝大式典
電都・共和国記念殿堂前の奉祝大式典。壇上に代表と儀仗が並び、広場を群衆が埋めた。

なのです主義人民共和国は第132期、人口1,008,000人に達し、世界で初めて究極繁栄賞を受賞した。前期の990,600人から17,400人増加し、1,000,000人の大台を突破。この歴史的栄誉を奉祝するため、首都電都では共和国記念殿堂を中心に大式典が執り行われ、各地の都市・農村、職場や学校の代表と市民が集った。中央大通りには国旗と奉祝の幕が続き、万歳の声が広場を満たした。

祝砲響く晴天の電都 共和国記念殿堂に群衆

式典の朝、電都は晴れ渡った。陽が高くなる前から中央大通りには旗を手にした市民の列ができ、農村の代表は収穫物を飾った荷車を伴い、工場の労働者や商人、学生たちも記念殿堂へ向かった。殿堂の扉が開かれると広場は静まり返り、開始の鐘とともに儀仗隊が整列。国家代表の入場を迎えて参列者は起立した。

「人口1,000,000人達成、世界初の究極繁栄賞受賞」。受賞が宣せられた瞬間、広場から歓呼の声が沸き上がった。祝砲が空に響き、秋風に旗が翻る。「共和国万歳!」「1,000,000人の共和国万歳!」。唱和は大通りの人垣へと伝わり、幾度も繰り返された。

政府代表、1,000,000人の功績を称える

国家代表は奉祝演説で、共和国の発展は都市を築く労働者、田畑を耕す農民、産業を興した技術者、将来を担う子どもたちを含む人民の力によって成し遂げられたと述べた。

「本日、我がなのです主義人民共和国は、世界に先駆け人口1,000,000人の大業を成し遂げたのであります。この栄誉は、共和国の建設に力を尽くしたすべての人民に帰するものであります。かつて500,000人を越えた日に誓った繁栄は、いま1,000,000人という結実を見たのであります」

代表はさらに「1,000,000人の人民は1,000,000人の希望であります。今日の栄誉に安住せず、すべての人民が幸福と誇りを持って暮らせる国家を築こうではありませんか」と呼び掛けた。殿堂前から盛大な拍手が起こった。

旗の大行列、中央大通りを進む

式典に続いて奉祝行列が始まった。旗手を先頭に都市・農村、工場、学校などの代表団が進む。農村の人々は穀物や農具を飾り、工業地区からは工具と製品を携えた参加者が加わった。沿道を埋めた家族連れから声援が飛び、子どもたちは祖父母の手を引いて国旗を見上げた。

「みんなで国を大きくしてきたと思うとうれしいのです」。小旗を振る工場労働者は晴れがましく語った。店々では祝賀の幕が張られ、記念の焼き菓子や麦茶が振る舞われた。

提灯の光の海 夜も続く奉祝

日暮れとともに大通りには灯がともり、提灯を手にした市民の列が殿堂へ向かった。赤や白の明かりが夜の街路を長く彩り、屋台から温かな食べ物の香りが漂う。「こんなに明るい電都を見るのは初めてだ」。肩車の子を支えた父親が、提灯の列を見渡していた。殿堂前の夜の奉祝会にも人々が集まり、再び万歳の声が響いた。

祝賀は地方へ 農村も工場も港も

祝賀は電都にとどまらない。各地の都市では通りに国旗が掲げられ、工場では働く者が集い、農村では収穫の仕事を終えた人々が食卓を囲んだ。港では船員たちが船に旗を掲げた。「電都には行けないけれど、私たちも共和国の一員なのです」。地方の女性は隣人と喜びを分かち合った。共和国を育てたのは首都だけではない。町の店主も山の採掘者も農地で働く人々も、その一人一人がこの国を支えている。

第120期の超繁栄賞から12期 人口ほぼ倍増

共和国は第120期、人口493,300人から554,300人となり、500,000人突破の超繁栄賞を受賞した。以来12期、人口は増え続け、前期990,600人から今期1,008,000人へ。超繁栄賞受賞時から453,700人増え、約1.82倍となった。人口904,200人のチェス=シロバキア共和国を上回り、世界第1位を守る。1,000,000人に届いた国は、いまなお共和国ただ一国である。

「500,000人になった時も驚いたが、これほど早く1,000,000人に届くとは」。かつての祝賀を覚える老人は記念殿堂の旗を見上げた。今後は記念碑や公共施設、国の歩みを伝える記録保存などの記念事業にも期待が集まる。ただし、これらは市民の間にある構想で、記念事業への期待が高まる。

歓喜の同じ期に大火 亡き14,300人に思い

一方、共和国では今期、4つの町で火災が相次ぎ、14,300人が死亡した。電都の奉祝と、焼け跡で家族を悼む人々の悲しみは、同じ共和国の現実である。1,000,000人達成の歓喜の中にあっても、救援と住まいの再建を急がねばならない。火災の詳報は5面。

奉祝社説 1,000,000人民の栄光、共和国の新しい世紀へ

祝え、1,000,000人の共和国。なのです主義人民共和国が世界に先駆けて究極繁栄賞を受賞した。500,000人から1,000,000人へ、わずか12期。田畑を耕す農民、工場を動かす労働者、港で働く船員、物を売る商人、家を建てる職人、学び舎の子どもたち。共和国を築いた人々に、本紙は心から祝意を表する。

この偉業は一人の英雄がもたらしたものではない。人々が働き、暮らしを営み、国を支えた日々の積み重ねである。栄誉を記念殿堂の中だけに閉じ込めてはならない。大通りにも農村にも港にも、この歴史の日を祝う資格がある。

同じ期、共和国は火災で14,300人の国民を失った。祝典を取りやめるべきではない。だが、繁栄を誇るなら同胞の救援と復興にも力を尽くさねばならない。国の偉大さは領土や兵力だけでなく、人々が安心して生き、明日への希望を抱けることにある。

1,000,000人の達成は終着点ではない。この栄誉を新しい国づくりへの誓いとしよう。なのです主義人民共和国の前途を寿ぐ。共和国万歳、1,000,000人民万歳。

究極繁栄賞
受賞なのです
今期の人口1,008,000人
前期の人口990,600人
今期の増加17,400人
届いた人数1,000,000人
首都電都、晴れ
人口の順位1位
第120期の超繁栄賞
受賞なのです
その週の人口554,300人
前の週の人口493,300人
届いた人数500,000人
人口の歩み
第120期554,300人超繁栄賞
第131期990,600人
第132期1,008,000人究極繁栄賞
中央大通りを進む奉祝行列
電都中央大通り。旗を掲げた市民、労働者、農村の代表が行進する。
提灯を掲げて夜の通りを進む人々
日没後の電都。提灯を手にした列が、記念殿堂の方角へ進む。

奉祝小欄 1,000,000人目の子

旗を振る幼子が母親に尋ねた。「ぼくが1,000,000人目なのですか」「さあ、どうかしら」「じゃあ、お母さん?」「お母さんはずっと前からいたわよ」。子は広場を見渡し、「じゃあ、みんなで1,000,000人なのです!」。母親はその手を握り直し、提灯の列が過ぎるまで二人で旗を振った。

奉祝行事
大式典共和国記念殿堂・受賞宣言と祝辞
祝賀行列電都中央大通り
夜間提灯行列と市民奉祝会
各地工場・農村・港の奉祝
社会火災と人の移動5

2国で大火、死者29,200人
焼け跡に家族を捜す人々

なのです14,300人、チェス14,900人 各国間では43,600人が職を求め移住

焼け落ちた家の前で家族を捜す人々
火災のあと。焼け落ちた家の前で、住民が家族と家財を捜している。なのです14,300人、チェス14,900人。

なのです主義人民共和国とチェス=シロバキア共和国で第132期、大規模な火災が相次ぎ、合わせて29,200人が死亡した。なのですの4か所で14,300人、チェスの都市と町3か所で14,900人。焼け出された人々は家財を失い、家族を捜し、住む場所を求めている。なのですでは世界初の究極繁栄賞を受けた同じ期に、悲しみの中での復旧作業が続いている。

なのです、4つの町で14,300人死亡

なのですの町での死者はそれぞれ4,900人、2,500人、3,800人、3,100人。燃え盛る家々を前に住民は井戸から水をくみ、手渡しで消火にあたった。「水が届く前に、屋根が落ちた」。煤にまみれた男は、そう言って焼け落ちた家を見つめた。

夜が明けるころには黒く焼けた柱が残り、崩れた屋根の下から家財を拾い集める人々がいた。家族を失った者、長年暮らした家を失った者、商売の道具をすべて焼かれた者。死者数の背後には、それぞれの生活があった。

チェスでは都市にも大火 死者14,900人

チェスでも火災被害が広がった。都市で5,700人、2つの町で4,800人と4,400人が死亡。住宅の並ぶ市街で火の手が隣家へ移れば、消火は容易ではない。「子どもを連れて出たときには、もう向かいの家まで燃えていた」。避難した住民は火の回る速さを語った。

家を焼かれた人々にとって火が消えた後も苦難は続く。今夜どこで眠るのか、明日何を食べるのか。チェスの領地は217区画から219区画となり、森と露天の鉱脈が新たにチェス領に入った。国土が広がった同じ期に多くの国民が亡くなった。政府には被災地の復興を急ぐ責任がある。

「祝賀の知らせは届いた」繁栄賞と被災地

なのですは今期、人口1,008,000人となり、世界初の究極繁栄賞を受賞した。首都電都には祝いの声が広がるが、火災のあった町では祝賀に加わる余裕のない住民もいる。「国が大きくなったのはうれしい。でも、父さんはもう帰ってこない」。焼け跡で家族を待つ少女の言葉が、繁栄の陰で失われた命の重みを伝える。

国全体の人口が増えても、一つの家から失われた家族は戻らない。住宅の防火、消火設備、避難体制、被災者支援。1,000,000人国家の仕事は受賞で終わらない。詳報は4面。

国境を越えた43,600人 新天地へ

大火災の一方、今期は大規模な労働移住も行われた。紅峰公国から泰平天国へ11,000人、灰岩王国からオラニウム連邦へ10,200人、チェスから胡椒帝国へ22,400人。合わせて43,600人が仕事を求めて新しい土地に迎えられた。

国境を越える人々の荷物には衣服や仕事道具、家族の写真が詰め込まれていた。「向こうで仕事があると聞いた。今より少しでも暮らしがよくなるなら、行ってみたい」。駅で列車を待つ若者は新天地への期待を語った。故郷を離れる寂しさはあっても、生活を切り開こうとする旅立ちである。

チェスから胡椒へ22,400人 受入側にも課題

今期最多の移住はチェスから胡椒帝国への22,400人。新住民を受け入れるには住居、食料、働く場所の準備が欠かせない。「働き手が来てくれるのはありがたい。だが、寝るところがなければ困るだろう」。胡椒帝国の商人は町の支度を案じた。移り住む人々が安心して暮らしを始められるか、受入国の力量が問われる。

教団から王国への鋼鉄、引き渡し待つ

狐っ娘の尻尾教団からオリョルッル王国へ送る鋼鉄600トンは、今期も引き渡しが済んでいない。各国間で戦争と交易の動きが重なる中、物資の受け渡しも関心を集める。クジラのいる区画は引き続き中立のままである。

本紙社説 繁栄の証しは、焼け跡の復興にこそ

なのですとチェスで29,200人が火災によって命を落とした。失われたのは人口統計の一部ではない。家族を養ってきた父親、子どもの帰りを待っていた母親、明日の仕事を約束していた若者。命の一つ一つに帰るべき家と迎えるはずの明日があった。本紙は犠牲者を深く悼み、両国政府に速やかな救援と復興を求める。

なのですは世界初の究極繁栄賞という歴史的栄誉を手にした。その成果は誇ってよい。しかし、1,000,000人を抱える国家の力は祝賀の盛大さだけで測られない。火に追われた住民を救い、焼け出された家族に住まいを用意し、再び同じ悲劇が起きぬよう備える。その仕事を成し遂げてこそ繁栄賞にふさわしい国となる。チェスにも同じ責任がある。新たな領土と資源を得た国力を、国民の暮らしのためにも向けるべきだ。

今期は43,600人が国境を越え、働く場所を求めて新しい土地へ移った。彼らを災害の死者として数えてはならない。移住先での仕事と住居を確保し、故郷とのつながりを保てるようにすることも各国の役割だ。焼け跡で明日を失った人々と、新天地で明日を探す人々。国家の豊かさは、そこで生きる人々が安心して明日を迎えられるかによって問われる。

火災の死亡
なのですの町4,900人
なのですの町2,500人
なのですの町3,800人
なのですの町3,100人
チェスの都市5,700人
チェスの町4,800人
チェスの町4,400人
なのです計14,300人
チェス計14,900人
合計29,200人
仕事で着いた人
紅峰から泰平11,000人
灰岩からオラニウム10,200人
チェスから胡椒22,400人
合計43,600人
荷物を持って列車を待つ家族
仕事を求めて列車を待つ人々。荷物は衣服と仕事道具。火災の被災とは別の旅立ちである。

小欄 焼け残った一冊

焼け落ちた町の一角で、老人が煤に汚れた帳面を拾い上げた。「家はなくなったが、これだけは残った」。焦げた表紙の内側には家族の商売の記録が並ぶ。再び店を開く日に、もう一度この帳面を使いたいという。

経済軍港と相場6

開戦前夜、緑丘の軍港が王国領に
オリョルッル、領土11区画拡大

黒潮も宣戦、緑丘135期・青海136期・黒潮137期に開戦予定 弾薬相場反落

軍港の岸壁に掲げられた旗
緑丘の軍港。掲げられた旗はオリョルッル王国のものとなった。今期、両国の交戦はない。

緑丘公国の軍港が第132期、オリョルッル王国領に変わった。両国の開戦予定は第135期であり、今期はまだ交戦していない。それにもかかわらず、軍港の旗は開戦前に入れ替わった。王国の領土は298区画から309区画へ11区画拡大し、緑丘は16区画から15区画へ減少。中立だった森と荒地も新たに王国領となった。

その王国に対し、カペレナとの戦争で苦境に立つ黒潮自治国も宣戦布告した。開戦は第137期の予定である。

砲声なき軍港の領有変更

開戦までまだ3期ある。その緑丘公国で、軍港に掲げられる旗が変わった。軍港は軍艦の配備や整備、海上戦力の運用を支える重要施設であり、領有の変更は今後の両国関係に影を落とす。

「昨日まで緑丘の旗があった岸壁に、今日は王国の旗がある。荷役の手を止めて、皆が見上げていた」。港で働く男はそう語った。港を管理するのは誰か、どの船が岸壁を使えるのか。港に生きる人々にとって旗の交代は地図上の出来事ではない。今期、緑丘とオリョルッルの間に交戦の記録はない。軍港の旗は、交戦の始まる前に変わった。

オリョルッル、領土309区画へ

王国は軍港のほか中立の森や荒地を領有し、領土を11区画広げた。緑丘は軍港1区画を失った。軍事拠点の喪失は面積だけでは測れない。今後どの艦艇が利用するか、どの海路に影響が出るか。新たな軍港の運用は、王国の海上戦力を左右する重要な問題となる。

黒潮も宣戦、王国に3つの開戦日

オリョルッルと緑丘は第135期、青海共和国と王国は第136期、黒潮と王国は第137期に開戦する予定である。青海は前期に宣戦を布告し、黒潮が今期これに続いた。黒潮はカペレナとの戦争で兵站基地と予備兵1,000人を失い、領土も縮小した。それでも潮見玄吾議長は「真の正義のために侵略者と戦う」と宣言した。

この宣戦が王国への圧力となるのか、黒潮自身の負担をさらに増やすのか。開戦が重なれば港湾業務や物資輸送にも影響する。泰平天国とアルガリスト帝国の開戦も第133期に迫っている。

弾薬相場反落 前期の上昇を失う

弾薬の世界相場は91.53から90.20へ1.33下落。第130期の90.80から第131期には91.53へ上昇したが、今期は反落した。工業品も64.49から63.82へ0.67下げ、続落となった。木材3.20、鋼鉄12、石油7.2、燃料6.8、石材5.6、鉱石4.8は変わらない。

「戦争が増えるなら弾薬は上がると思ったんだが、相場は思いどおりにならない」。市場の商人は値下がりを見て首をひねった。宣戦布告が相次いでも、相場は今期、値を下げた。注文と売り物、在庫を読み違えれば商売は成り立たぬ。

王国国庫、12,753億円に

オリョルッル王国の国庫は12,029億円から12,753億円へ724億円増加した。カペレナ王国は4,521億円から4,536億円、チェスは11,297億円から12,491億円となった。一方、なのですは6,972億円から6,385億円へ減少し、黒潮は11,173億円から11,188億円へ増加した。国庫に余力があっても、戦時の物流や生産には、国庫資金に加えて施設や働き手も必要だ。

市場に弾薬、石油、工業品の売り注文

銀嶺侯国は弾薬6を495で、アルガリスト帝国は石油82を539で、紅峰公国は燃料88を538で売りに出した。青海と白波は工業品8を493で、黄砂同盟は石油82を535で、アルガリストと緑丘は食料600を626で出品。いずれも売り注文であり、売買が成立した数量ではない。

民間交易、なのですが2位に浮上

民間の貿易量はあろあろ国4,353で首位、なのです3,501で2位、青海2,548で3位となった。前期まで2位の青海をなのですが上回った。1,000,000人を達成したなのですの交易活動が存在感を増している。

油田と採石場で落盤 蓄積資源失う

チェスの海底油田は蓄積255、翠湖自治州の海底油田は425、カペレナの採石場は106を落盤で失った。施設段階はそれぞれ4から3、4から3、5から4へ低下した。原料の供給を支える施設の損傷は、国庫とは別に重い負担を残す。

経済論説 軍港の旗は、開戦より先に変わった

オリョルッル王国は緑丘の軍港を得て国土を11区画拡大した。正式な開戦は第135期。それより先に港の旗が変わったことは重大である。国境の緊張、軍事施設の帰属変更、各国の外交的な駆け引き。こうした動きの積み重ねの上に、やがて砲声が響く。

本紙は、力を背景に軍事拠点の領有を変えていく動きを憂慮する。新たな領土を得た国には、その土地の人々の暮らしを守る責任がある。王国には第135期の緑丘、第136期の青海、第137期の黒潮と、3つの開戦が迫る。軍港に働く者や商人は、次の船と荷の行き先を案じている。

市場では弾薬相場が反落し、工業品も続落した。戦争が近づけば相場は必ず同じ方向へ動くというものではないが、海上輸送の道が閉ざされる危険は無視できない。本紙は各国政府に、民間交易と輸送を守るよう求める。国の強さは軍港の数や国庫だけで決まらない。戦時にも食料を届け、工業品を生産し、商人が安全に行き来できる社会を保つ力こそ、長く戦いに耐える国力である。

港に働く人々、交易を担う商人、工場で品物を作る者たちの暮らしもまた、この戦争の中にある。

相場
弾薬91.53→90.20
工業品64.49→63.82
石材5.6
鉱石4.8
木材3.20
鋼鉄12
石油7.2
燃料6.8
開戦の予定
泰平とアルガ第133期
オリョルッルと緑丘第135期
青海とオリョルッル第136期
黒潮とオリョルッル第137期
貿易量
あろあろ4,353
なのです3,501
青海2,548

小欄 開戦前の注文書

緑丘の港の縄問屋は今朝も帳面を開いた。「綱を注文する船はいる。だが、代金を誰が払うのかが分からなくなった」。旗が変わっても船には綱が要る。主人は引き取られない綱の束を前に「船が来るうちは、商売をするさ」とつぶやいた。

気象空と海7

白波商船に魚雷命中、南海に黒煙
中立駆逐艦が攻撃、沈没免れる

晴天206区画減、曇天広がる 北方の雪は40区画で変わらず

黒煙を上げながら海上に浮かぶ商船
南方海域の白波王国商船。魚雷を受けて黒煙を上げているが、沈んではいない。被弾後の耐久値は2。
第132期の天気図
第132期の空。晴れ3,691、曇り3,966、雨396、雪40、雷7。雪は第130期から40区画のまま。

南方海域で第132期、中立の駆逐艦が発射した魚雷が白波王国の商船に命中した。船は黒煙を噴き、耐久値が2まで低下。沈没は免れたが船体は深刻な損傷を受けた。一方、世界の晴天区域は206減り3,691区画、曇天は227増えて3,966区画。北方の雪は前期と同じ40区画だった。

南海に走る魚雷 白波商船、危機一髪

南の海で中立駆逐艦から魚雷が放たれた。「魚雷だ!」。見張りの叫びとともに甲板に緊張が走った。衝撃の後、船員たちは損傷箇所の確認と消火に追われた。商船は沈まなかったが、被弾後の耐久値はわずか2。帰港まで船員の不安は消えまい。

商船は軍艦ではない。荷を運び、各地の市場と人々の暮らしを結ぶ船である。その船が魚雷を受けたことは、南方海域を航行する商人に大きな不安を与える。

中立艦が商船攻撃 海上の安全に疑問

今回の攻撃艦は中立の駆逐艦だった。商船にとって敵国艦艇を避けるだけで安全な海ではなくなった。「荷を届けなければ商売にならない。だが船ごと失っては元も子もない」。白波の港の商人は被弾の報に表情を曇らせた。

同じ期には、別の中立駆逐艦が南方の浅瀬へ魚雷を放ったほか、緑丘公国の駆逐艦も浅瀬へ発射した。これらの発射は白波商船への命中とは別の出来事である。

船員たちの帰港を待つ

黒煙を上げながら沈没を免れた白波の商船。港で待つ者にとって、船が浮いている知らせは救いだ。しかし船が浮いていることと、無事に帰港することは別である。修理できるのか、積み荷を届けられるのか。船員の命と、帰りを待つ家族の暮らしも懸かる。

曇天、晴天を上回る

曇りは前期3,739区画から今期3,966区画へ227増加。晴れは3,897区画から3,691区画へ206減少した。雨は417から396区画へ21減少し、雷は7区画のまま。世界は今期、晴れより曇りの区域が多い。「朝から空が重い。洗濯物を出すか迷うね」。雨が降らずとも、農作業や洗濯、荷の乾燥には気を使う。

北方の雪、3期続けて40区画

北方の雪は第130・131・132期と40区画で横ばい。雪の区域に変化はないが、冬支度は続く。「雪が増えないうちに薪を積めるだけ積む」。荷車から薪を降ろす男は軒下の束を確かめた。

首都の空、晴れと雨に分かれる

黒潮の首都、電都、チェスの首都、天都、モンタルジェント、ブロースコーグ、シネモルスク、旧エスペランサの町は晴れ。カペナグラード、教団の首都、シャンドール、青海の首都は曇り。オリョルッルと丹城は雨だった。ネルヴェナも雨。最後の住民100人が艦砲で死亡した無人の町にも、雨が降り続いている。

外洋航海、青海488で首位

外洋航海の記録は青海488、黒潮254、緑丘56。前期の483、250、53からそれぞれ増加した。各国が相次ぐ開戦を控え、民間商船の安全がいっそう問われる。

第132期の海流図
第132期の海流。航海の記録は青海488、黒潮254、緑丘56。海流図は海水の流れを示す。
海事論説 中立の旗の下で、商船を撃つな

白波商船が中立駆逐艦の魚雷を受けた。辛うじて沈没を免れたものの、耐久値は2。海上交易を担う船がこのような危険にさらされる事態を、本紙は厳しく非難する。商船が運ぶのは商人の利益だけではない。食料、燃料、工業品。工場や家庭が必要とする品物は海を渡る。

中立の旗は武器を自由に使うための免罪符ではない。船員が安全に帰港し、民間の船が不必要な危険にさらされずに航行できる海を守るべきだ。これから世界で幾つもの戦争が始まろうとしているからこそ、海上の安全を守る努力を怠ってはならない。海へ軍艦を送り出す勢力には、その責任がある。

空の区画
晴れ3,691
曇り3,966
雨396
雪40
雷7
合計8,100
白波の商船
攻撃中立の駆逐艦の魚雷
状態黒煙、沈んでいない
耐久値2
外洋航海
青海488
黒潮254
緑丘56

小欄 白波の港の灯

夕刻、白波の船具店では灯を一つ増やし、修理用の縄と布を棚から出した。「帰ってきたとき、何が必要になるか分からないからね」。店主は港を何度も眺める。沖にはまだ、待ち望む船影は見えない。

入門第24回8

国庫の品物、いくら民間へ回す?
輸出上限の選び方

港を開いただけでは交易は動かない 余剰供給・数量指定・供給停止の3つの方式

政府の倉庫に食料が山積みでも、民間の商店には食べ物が並ばないことがある。国庫と民間市場は別の仕組みで動くからだ。第24回は民間への「輸出上限」と自動買い戻し、家計の消費、長期供給契約を解説する。第23回の港湾政策と合わせて考えたい。

政府と商人は別の財布を持つ

例えば政府が食料100,000トンを持っていても、それだけで商店の棚は満たされない。政府が民間に品物を出し、商人が仕入れて初めて販売につながる。港を整備するのは政府だが、そこで船を動かし利益を計算するのは民間の商人。その入り口を調整するのが輸出上限だ。

3つの方式、それぞれの利点と欠点

第一は余った品を民間へ回す方式。必要な備蓄を残し、余剰で取引を育てる。第二は量を指定する方式。軍需品などを一定の範囲で供給する。第三は民間へ供給しない方式。国庫の品を守れる半面、市場の仕入れは細る。「全部しまっておこう」と考えても、商人へ何も渡さなければ商品は売れない。

民間への輸出上限
余剰供給必要な備蓄を残して余剰分を出す
数量指定出す量を政府が指定する
供給停止国庫から民間への供給を止める

食料は暮らし、弾薬は国防を支える

食料を抱え込むばかりでは町の棚が空く。反対に弾薬を大量に民間へ放出してしまえば、戦時に国庫の備蓄が足りなくなる恐れもある。カペレナとの戦争を続け、新たにオリョルッルにも宣戦した黒潮にとっては特に切実な選択だ。備蓄と交易の両立こそ政策の要点となる。

国庫が不足を補う自動買い戻し

民間への供給とは反対に、国庫の品が不足すると民間から自動で買い戻す。処理は毎期行われ、人が指揮する国は残す量の設定や必要量に応じた方式を選べる。食料以外は消費6期分、食料は20期分が一つの目安だ。例えば一期間に食料10,000トンを消費する国なら20期分は200,000トン。国庫に150,000トンあれば不足の目安は50,000トンとなる。ただし民間在庫と予算が許す範囲でしか買えない。

弾薬は平時3期、危険時6期

弾薬の備蓄目安は平時が消費3期分、危険時は6期分となる。オリョルッルとの開戦を緑丘は第135期、青海は136期、黒潮は137期に控える。備蓄の必要量を見定めずに民間へ出してしまえば、前線で苦しむことになる。

買い戻しにも予算の限度

自動買い戻しで使える予算は「国庫の1割」と「国庫に1,000億円を残した残額」の小さい方が上限だ。例えば国庫5,000億円なら1割の500億円、残額4,000億円を比べ500億円まで。国庫1,200億円なら120億円と200億円を比べ、120億円までとなる。必要な品物があっても金庫を空にするわけにはいかない。

家計の代金は国庫へ直行しない

都市の市場や市場施設で工業品、食料、燃料などが家計へ売られる。家計の支払った金が、そのまま政府の収入になるものではない。民間の預け入れ、引き出し、借り入れは自動で行われ、政府は一件ずつ操作しない。自動で預ける現金の上限は10,000億円、元手の下限は2,000億円である。

長期供給契約も戦争で止まる

民間は不足する国と余る国の間で長期供給契約を自動で結ぶが、戦争、禁輸、港の閉鎖で契約は止まる。国庫に品があっても上限を閉じれば商人へ渡らず、民間在庫があっても港が閉じれば海を渡れない。前回の港湾政策と今回の輸出上限は一体で考える必要がある。

今期の民間貿易、なのですが2位へ

第132期の貿易量はあろあろ国4,353、なのです3,501、青海2,548。なのですは世界初の究極繁栄賞を受け、民間交易でも存在感を高めている。青海はオリョルッルとの開戦を控え、商いを続けられる港湾政策が問われる。

本欄の提言 国庫に眠る富を、暮らしの富へ

立派な港と大量の国庫備蓄があっても、商人に品を渡さなければ市場は育たない。政府が握るのは取引の入り口を開く権限であり、売り先や仕入れを決めるのは民間の商人である。

本欄は平時には余剰品をできるだけ民間へ供給し、交易と家計を支える政策を勧める。ただし必要な食料や弾薬を放出し、国防を危うくしてはならない。平時と戦時に一律の上限を押し通すより、必要な備蓄を守り、余った富を民間へ渡す柔軟さが要る。商人が安全に品を運べる港と外交関係を維持することこそ、国庫の富を暮らしへつなげる道だ。

次回・第25回は軍艦の建造を解説する。

品の流れ

国庫から、輸出上限を通って、民間の在庫へ。そこから家計と、他国の民間へ渡る。足りなければ、国庫が民間から買い戻す。家計が払った金は、国庫には入らない。

品物と金
品物国庫 → 輸出上限 → 民間在庫
品物民間在庫 → 家計
品物民間在庫 → 他国の民間
品物民間在庫 → 国庫(買い戻し)
金買い戻しの予算は国庫から出る
金家計の代金は国庫に入らない
3つの方式と民間への供給
余剰供給備蓄を残し、余った分だけ出る
数量指定政府が決めた量が出る
供給停止国庫から民間へは出ない
今期の貿易量
1位あろあろ 4,353
2位なのです 3,501
3位青海 2,548
買い戻しの目安
食料消費20期分
食料以外消費6期分
弾薬・平時3期分
弾薬・危険時6期分
予算国庫の10%と1,000億円を残した額の小さい方

小欄 倉庫番と商人の口論

「食料が山ほどあると聞いた。少し売ってくれ」「政府が上限を閉じている」。商人は港を指した。「船も買い手もいる。それで品だけ出ないのか」。倉庫の袋は山積みだが、商人の荷車は空のまま帰った。

国特集藍岬9

海風に染まる青い町
シネモルスクを歩く

藍染めの布がはためく岬 塩を運ぶ小舟と職人たちの暮らし

岬の染屋で布を藍に浸す職人
シネモルスクの岬。染屋が布を藍に浸し、風で乾かしている。

「藍色の岬に集う共和国の連邦」。藍岬共和国連邦が掲げるその言葉を、首都シネモルスクの風景ほどよく表すものはない。第132期の町は晴天。岬の斜面には家々が並び、崖の上で職人たちが藍色の布を干している。下の船着き場には塩の袋が積み上げられた。人口75,500人、領土17区画のこの国は、対外戦争を行っていない。

「同じ青でも、海とは違う」岬の染物

坂を上ると低い屋根の染屋が並ぶ。桶から引き上げた布を広げ、職人が色を確かめた。「一度では染まらない。風が表を乾かしても、裏を急げば色がまだらになる」。竿に掛かった布が風に揺れる。仕事着、祝いの日の布、船員が荷を包む粗い布。藍染めは町の暮らしを彩る。

風任せにはできぬ職人の仕事

岬では海風が絶えず吹く。布を乾かす助けとなる一方、風向きが急に変われば品を傷める。「お客さんが急ぐからといって、藍まで急いでくれるわけじゃない」。若い職人は竿の布を掛け直した。仕上がりを待つ手間こそ、染屋の誇りである。

塩を積んで戻る舟 海の商い

崖の下では沖から戻った小舟が塩の袋を下ろしていた。「染物ばかりがこの町の商売じゃない。塩がなければ食い物も長く持たないからな」。舟の男は袋を結び直す。「角を結ばないと、塩の袋ごと崖から飛ぶ」と荷を押さえた。「塩が無いと、藍が布に残らない」と染屋も塩の舟を待つ。舟を出す者、荷を運ぶ者、布を染める者。その仕事が岬の町を支えている。

「岬ごとに違う顔がある」共和国連邦の暮らし

藍岬は「共和国連邦」を名乗る。「同じ国でも、町が違えば売り物も違う。うちの岬では布と塩がよく動く」と市場の商人。異なる土地の暮らしが一つの国に結び付く。そのまとまりを象徴するのが、岬を彩る藍色なのかもしれない。

75,500人の国 守るべき日常

人口75,500人、兵力20,000人、国庫6,236億円、食料678,900トン、領土17区画。国の規模は大国に及ばないが、産業と防衛力を持ち、現在は戦争に加わっていない。「戦争の話が増えると、船を出すにも気になることが増える」。舟を扱う男は沖を眺めた。平穏が永遠に続く保証はないからこそ、今ある仕事と家族の日々を守ることが大切になる。

夕暮れ、藍色の布が町へ戻る

日が傾くと染屋は竿の布を下ろした。若い職人が端をそろえ、主人は仕上がりを確かめる。下の船着き場には最後の舟が戻り、荷車が坂を上る。「明日はもう少し濃くしよう」。主人は染めかけの布を畳んだ。海が夕陽で色を変えても、店先の藍は深い青を保っていた。

地方評 小さな国の豊かさは、平和な港にある

藍岬共和国連邦は軍事大国ではない。小国にも大切な暮らしがある。染屋が布を仕上げ、舟が塩を運び、市場に客が集う。こうした営みは戦果表や領土の数には表れない。

本紙は国の繁栄を軍事力だけで測る風潮に与しない。住民が安心して仕事をし、家族と暮らし、技術を次の世代に伝えられることも国家の力である。戦争をしていない今こそ、港を整え産業を育て、職人の技を残してほしい。岬で藍を染める職人が明日も同じ仕事を続けられる平穏は、守るに値する。

藍岬共和国連邦
首都シネモルスク
人口75,500人
兵力20,000人
国庫6,236億円
国の食料備蓄678,900トン
領地17区画
首都の天候晴れ
対外戦争なし
崖下で塩の袋を結ぶ人
シネモルスクの崖下。帰港した小舟から塩を揚げ、風で飛ばないよう袋の角を結ぶ。

小欄 藍の色見本

シネモルスクの染屋の壁には、淡い青から夜の海ほど濃い藍まで、小さな布切れが並ぶ。客が「見本と同じ色を」と言うと主人は笑った。「染料や布、その日の天気で少し違う。その違いも楽しんでもらえたら職人冥利だ」。

文化オラニウム10

一夜の舟を迎えた港町の物語
『埠頭の頁』、ピーヘンの読書会

無署名短編『埠頭の頁』 消された一行をめぐる父娘の物語

灯の下で本を囲む人々
ピーヘンの読書会。埠頭の帳面をめぐって、夜まで頁を開いている。

オラニウム連邦の首都ピーヘンで、無署名の短編『埠頭の頁』が読まれている。娘が帳面に書きつけた舟の一行が、翌朝には綱のない杭を指していた。港の日常にひそむ一夜の出来事を、静かな筆致で描く。

朝には綱がない

主人公の娘は、埠頭に繋いである舟を一行ずつ帳面へ写す。翌朝、一行多い。父と岸へ出ると、その行の場所には綱がなく、水だけが杭を叩いていた。舟は隣町のもので、一夜だけ風を避けて繋がれていた。

父は娘を責めない。杭を叩き、「この行は消していい」と告げる。娘は頁の端を折り、昨夜の舟の一行を消した。帳面から名は消えても、泊まった舟の綱が残した擦れは杭にあった。

読書会は夜まで続く

ピーヘンの読書会では、一夜の舟を町の舟に数えるべきか、議論が分かれた。「繋いだ夜は、この町の杭を使った」と言う者も、「朝にいない舟を町の舟には数えない」と答える者もいる。

埠頭の番人は「綱の擦れを見ろ。一夜の擦れと、冬を越した擦れは違う」と語る。父の静かな振る舞いと娘の迷いをめぐり、読者は頁を戻して話し続けた。

消された一行をどう読むか

帳面は港を管理するためにある。誰の舟がいつ岸にいたかを記すことと、その舟を町の所有物として数えることは違う。娘は父に教えられたとおり一行を消す。その手元を描くことで、作品は町の仕事の細やかさと、記録から消えた一夜の記憶を残した。

詩「頁の塩」

杭に残った塩を
指で払って
頁を開く

一夜の綱は
朝の水が
先に解く

消した行のあと
インクが
まだ海のにおい

灯を落とす前に
次の舟の
杭を空ける

港の暮らしを読む

読書会が終わるころ、窓の外では港の灯が水面に揺れていた。「たった一行を消す話なのに、ずいぶん考えさせられた」。参加者は本を閉じながら語る。誰もが見知った埠頭と帳面を舞台に、町の小さな約束を描いた一編である。

文芸時評 消した行が、杭を残す

『埠頭の頁』の娘が消したのは、町の舟ではなく一夜だけ風を避けた隣町の舟である。父は責めず、杭を叩き、消してよい行を示した。

読書会が夜まで続いたのは、数の正しさより、誰の杭を使ったかという問いが残ったからだ。帳面を閉じた後にも塩のついた杭がある。記録を正す仕事と、港が迎えた一夜の記憶を、この短編は同時に描き切った。

次回は、朱川共和国。

オラニウム連邦
首都ピーヘン
人口198,000人
兵力37,500人
国庫5,888億円
国の食料備蓄995,900トン
領地41区画
対外戦争なし
今週の一冊
書名『埠頭の頁』
著者無署名
舞台ピーヘンの埠頭
内容一夜だけ繋いだ舟の一行を、娘が朝に消す
主題町の舟と、一夜だけ風を避けた舟の見分け
埠頭で帳面の一行を消す娘と、杭に手を置く父
朝の埠頭。娘は帳面の一行を消し、父は杭に手を置いたまま責めない。

小欄 綱の擦れ

港の番人が杭の古い傷を指でなぞった。「一晩の綱と、冬を越した綱じゃ擦れ方が違う」。読書会のあと、参加者は埠頭へ足を運び、その杭を見た。

スポーツ桃谷11

桃一つ落とさず頂上へ
昨年2位の若手、悲願の初優勝

ナンサプ「段の駆け」 速さと収穫の技術を競い、沿道に歓声

桃の籠を持って石段を駆ける二人
ナンサプの段々畑。桃の籠を持って、石段を上がる。

桃谷連邦共和国の首都ナンサプで第132期、収穫競走「段の駆け」が開かれた。段々畑の麓から頂上まで桃の籠を抱えて石段を上がる伝統行事。桃を一つでも落とせば失格となる厳しい競技で、昨年2位の若い摘み手が初優勝を飾った。勝ったのは地元の桃畑で働く昨年2位だった若い摘み手。昨年の悔しさを胸に、桃を傷つけず先頭で頂上へ駆け込んだ。

桃を守って走れ 収穫の町の伝統競技

「段の駆け」は収穫期に行われる競走だ。選手は桃を入れた籠を抱え、畑の麓から石段を上がる。単に速く着けばよいのではない。途中で桃を落とした者は失格となる。失格せずに運び切った選手は、石段を上がる速さと籠に残った桃の数をもとに順位を競う。「速く走るだけなら籠なんかいらない。桃を守ってこそ、この町の競走だ」。沿道の年配の農夫は笑った。

序盤から激しい競り合い

競走が始まると選手が一斉に石段へ踏み出した。序盤に飛び出した選手は先頭を走ったが、段を上がるにつれて籠が揺れ始める。若い摘み手は無理に追わず、籠を胸に固定して一段ずつ足を置いた。「急げ」「桃を落とすな」。沿道から声が飛ぶ。一つの失敗が失格に直結する緊張が、石段を包んだ。

最後の石段、昨年の雪辱果たす

勝負が動いたのは頂上前の最後の石段だった。先頭の選手が籠を抱え直した隙に、若い摘み手が距離を詰める。観客が身を乗り出す中、籠を揺らさずに最後の段を踏み切り、先頭で到着した。籠には桃が一つも欠けずに残っていた。「やったぞ!」。歓声が上がり、昨年2位の悔しさは喜びに変わった。

「去年の悔しさ、忘れなかった」

「去年は最後の段で負けた。悔しくて仕方がなかった。今年は一段ずつ確実に上がろうと決めていた」。若い摘み手は汗を拭って話した。収穫仕事の後も石段を上り、籠の抱え方を考えたという。「段を飛ばすと、籠の桃が先に着く。それは負けだ」。日々の摘み手の仕事で磨いた技術が、勝利を呼び込んだ。

敗れた選手にも拍手

途中で桃を落として失格となった選手もいた。落ちた実はすぐには戻さず、競走終了後に回収された。敗れた選手の一人は頂上で若い摘み手の肩をたたき、「来年は負けないぞ」と笑った。「また一緒に走ろう」と若い摘み手。勝者も敗者も、明日は同じ畑で働く仲間である。

桃谷の秋、石段に戻る日常

競走後、観客は家路につき、摘み手は籠を片付けた。落ちた桃は傷み具合を確かめ、使える実と傷んだ実に分ける。「競走が終わっても、桃の仕事は終わらないからね」。桃谷連邦共和国は人口83,000人で、今期は対外戦争を行っていない。遠くでは戦争が続く中、ナンサプには収穫の日々が戻る。若い摘み手も優勝の喜びを胸に畑へ帰っていった。

スポーツ評 速さだけでは勝てぬ「段の駆け」

ナンサプの「段の駆け」は速い足だけでは勝てない。桃を抱えて石段を上り、なるべく多く残して頂上へ運ぶ。無理な追い抜きは失格を招く。速さと慎重さという二つの力が必要だ。優勝した摘み手は昨年の敗北を糧に、歩幅と籠の扱いを磨き、自らの技術を信じて優勝した。

この競走が面白いのは、農業で培われた技が町中の喝采を浴びるところにある。収穫物を大切に運ぶ日常の仕事が、一年に一度の晴れ舞台になる。日々の労働へ観客が拍手を送る。この土地ならではの競技文化を、桃谷にはこれからも育ててほしい。

段の駆け
場所ナンサプの段々畑
運び方桃を入れた籠
コース石段を下から上へ
失格桃をこぼす
勝者若い摘み手(昨年2位)
前年成績2位
勝敗速さと籠に残った桃の数
桃谷連邦共和国
首都ナンサプ
人口83,000人
対外戦争なし
籠の桃を確かめる若い摘み手
競走のあと。籠に残った桃を確かめる若い摘み手に、周囲から拍手が送られた。

小欄 敗者が拾った桃

観客が帰り始めたころ、一人の選手が自分の籠からこぼれた桃を拾った。「これを落とさなきゃ、もっと上に行けたんだが」。農夫が「来年のために取っておけ」と言うと「来年まで取っておいたら、腐っちまうよ」。二人は笑いながら桃を籠に戻した。