夕刊
第129期
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トレーディア
新聞THE TREDIA SHIMBUN
トレーディア暦2年9月第2週
秋季
本日9面
主な記事 オルシア陥落 皇国、都を置く いのら 民間食料5,000トン 雪は80区画 灰岩
総合都市陥落1

黒潮のオルシア陥落 
カペレナ軍、兵站基地も占領

現代都市失い、予備兵1,000人奪われる 黒潮人口は15,900人に

港に面した石の現代都市と、門に立つ歩兵
カペレナ軍に占領された現代都市オルシア。前号までは黒潮自治国領だった。

カペレナ王国軍が黒潮自治国の現代都市オルシアを占領した。前号まで黒潮領だった都市は、今週からカペレナ領に変わった。王国軍は近くの兵站基地も占領し、予備兵1,000人を奪った。黒潮は同じ週に現代都市と兵站拠点を失い、沿岸で後退した。

黒潮の人口は前号の28,200人から15,900人へ、12,300人減少した。兵力も83,000人から76,000人へ7,000人減っている。

兵站基地も陥落、予備兵1,000人を失う

オルシアとともに失われたのが、近くの兵站基地である。兵站基地は陸軍の兵員補充を支える拠点となる。今回の占領では予備兵1,000人も奪われた。黒潮は現代都市に加え、兵員補充の拠点も失った。

陸上では、カペレナ軍の北部攻撃隊が黒潮の首都にいる第1方面軍を攻撃した。王国の装甲兵と歩兵も、森にいる黒潮第32軍空兵を攻撃。黒潮側の部隊も反撃した。

今週、カペレナ軍が黒潮軍に与えた損害は6,100人、黒潮軍がカペレナ軍に与えた損害は1,600人。累計戦果はそれぞれ132,400人、89,500人となっている。

艦砲、市民二週で400人が犠牲

カペレナ軍の艦砲が黒潮の現代都市フィルノアに再び命中し、一般市民200人が命を落とした。前号の200人と合わせ、二週で400人。市街の人口は2,600人から2,200人へと減っている。

フィルノアは黒潮領のままだ。都市の領有が変わらなくとも、艦砲は住民の命を奪う。戦闘の勝敗だけを追っていては、都市が負う傷の深さを見誤る。黒潮の首都もなお同国が保持している。詳報と戦況図は2面。

皇国、三たび都を構える

二度にわたって首都を失ったエスペランサ皇国が、新たな場所に首都を置いた。名もエスペランサ。人口は前号の5,500人から3,100人に減り、兵力は32,700人、人手不足は15,400人に上る。

チェスとの交戦は続き、今週、チェス軍が皇国軍に与えた損害は2,800人、皇国軍がチェス軍に与えた損害は500人。詳報は3面。

狐っ娘教団の鉄鉱山で落盤

狐っ娘の尻尾教団が保有する鉄鉱山で落盤が起き、鉱山の段階は10から9に下がり、蓄積量は347減少した。前号で伝えたエクアドリア大陸の鉄鉱山は、弾薬製造に必要な鋼鉄の供給源である。経済面は5面。

戦況カペレナと黒潮2

首都と森で両軍交戦 
カペレナ、オルシアと兵站基地を占領

王国軍の戦果6,100人 フィルノアでは市民二週で400人犠牲

オルシアとフィルノア、北の首都の図
カペレナ・黒潮戦線。オルシアは今期からカペレナ領。フィルノアでは艦砲によって今週も市民200人が犠牲となった。

カペレナ王国軍が黒潮自治国の現代都市オルシアと兵站基地を占領した第129期、両軍は黒潮の首都と周辺の森でも交戦した。王国軍の北部攻撃隊は首都にいる黒潮第1方面軍を攻撃。別の方面では装甲兵と歩兵が森の第32軍空兵を攻撃し、黒潮側の部隊も反撃した。

今週、カペレナ軍が黒潮軍に与えた損害は6,100人、黒潮軍がカペレナ軍に与えた損害は1,600人だった。

オルシア陥落、兵站基地も失う

オルシアは前号まで黒潮領だったが、今週からカペレナ領となった。王国軍は近くの兵站基地も占領し、予備兵1,000人を奪った。

兵站基地は陸軍の兵員補充を支える施設である。黒潮軍は都市の領有を失っただけでなく、兵員補充の拠点も失った。

両軍が相手に与えた損害には今週4,500人の開きがあった。累計戦果はカペレナ132,400人、黒潮89,500人に上る。

フィルノアに再び艦砲 市民200人死亡

二週で犠牲400人、港町に被害広がる

カペレナ王国軍の艦砲が、黒潮自治国の現代都市フィルノアを再び襲った。今週の死者は市民200人。先週も200人が犠牲となっており、二週で400人が命を落とした。市街の人口は2,600人から2,200人に減った。

港に近い住宅街では砲弾を受けた家々が崩れ、通りには瓦礫が散乱した。家族を捜して焼け跡を歩く住民の姿もあった。住む家を失った人々は、無事だった建物に身を寄せて夜を明かした。港の荷役は滞り、市場でも店を閉める商人が相次いだ。

フィルノアはなお黒潮領にあるが、市街への砲撃は二週続いている。

カペレナ軍の巡洋艦は現代都市ネルヴェナにも砲を向け、戦艦は沖合の水面を砲撃した。黒潮軍の駆逐艦も沖合から艦砲射撃を行い、沿岸での戦闘は続いている。

市街地への艦砲射撃を非難する

フィルノアで二週続けて市民が殺された。死者は400人に達し、港町には砲撃で家を失った住民があふれている。

カペレナ王国軍による市街地への砲撃は、強く非難されなければならない。

軍事上の目的が何であろうと、住民が暮らす街に砲弾を撃ち込み、多数の死者を出すことが許されてよいはずはない。ましてフィルノアでは、一度ならず二度までも同じ惨事が繰り返された。王国軍は市民の犠牲を顧みず、砲撃を続けている。

王国軍は今週、オルシアと兵站基地を占領し、黒潮軍に大きな損害を与えた。しかし、戦場で優勢に立つことと、市民の暮らす街を砲撃してよいこととは別である。どれほどの戦果を挙げようとも、フィルノアの死者400人が帳消しになるわけではない。

カペレナ王国は市街地への砲撃を直ちに中止し、犠牲となった住民への責任を果たすべきである。

王国、首都放棄説で黒潮を揺さぶる

カペレナ王国は国家コメントで、黒潮指導部が首都を捨てて西へ逃れたと主張した。オルシアと兵站基地の陥落に重ね、黒潮政権の動揺を印象づける王国側の宣伝である。

王国はまた、黒潮の駆逐艦による艦砲射撃を「小舟」の活動と呼んで揶揄し、黒潮が海上での反撃を誇示して国家の威信を保とうとしていると皮肉った。都市と兵站基地の占領に続き、敵国の海軍の働きも過小に見せようとする王国側の宣伝である。

潮見議長の演説に怒号 開戦と配給を追及

黒潮自治評議会の潮見玄吾議長は首都の評議会前で演説に立ち、カペレナ王国の首都放棄説に反論した。「私はここにいる。評議会も首都を離れていない。失った土地は必ず取り戻す」。集まった住民に徹底抗戦を訴えた。

だが、その最中に「黄砂同盟に宣戦布告したのは、こっちじゃないか。自分で戦争を広げておいて、今さら何が徹底抗戦だ」と怒声が飛んだ。黒潮が第122期に黄砂同盟へ宣戦布告したことをめぐり、賛同の拍手に交じって議長の戦争指導を批判する声が相次いだ。

続いて食料配給をめぐる不満が噴き出した。「国には一兆円以上の金があって、食料だって九十万トン以上あるんだろう。それなのに、ついこの間まで民間の倉は空っぽだった。政府はなぜもっと早く配らなかったんだ」。国庫は11,420億円、国の食料備蓄は922,500トンに上る。一方、民間食料在庫は前号のゼロから今号5,000トンに回復したばかり。「それだけで足りると思うのか」と詰め寄る住民もいた。

議長は演説を中断し、「黄砂同盟への宣戦も、配給の遅れも、政府には説明する責任がある。備蓄を市民の食卓に届ける」と応じた。だが、集まった人々の不満は収まらなかった。王国の宣伝を否定する言葉だけでは、戦争の長期化と日々の食料不足に苦しむ住民を納得させられなかった。

黒潮の首都、なお保持

黒潮の人口は15,900人、兵力は76,000人。前号から人口は12,300人、兵力は7,000人減った。首都は引き続き黒潮領で、周辺では戦闘が続く。カペレナの人口は287,700人、兵力は135,200人。

両軍の戦果
国今週与えた損害累計戦果
カペレナ6,100人132,400人
黒潮1,600人89,500人
陸上の交戦
方面攻撃した部隊攻撃を受けた部隊
黒潮の首都カペレナ北部攻撃隊黒潮第1方面軍
森カペレナ装甲兵・歩兵黒潮第32軍空兵

黒潮側の両部隊も反撃した。

陥落と砲撃被害
オルシアカペレナ軍が占領
兵站基地カペレナ軍が占領、予備兵1,000人を奪う
フィルノア市民200人死亡、二週で400人
ネルヴェナ王国巡洋艦が砲を向けた
黒潮の首都黒潮領を維持
両国の国勢
項目黒潮カペレナ
人口15,900人287,700人
兵力76,000人135,200人
首都の天候晴れ曇り
評議会のバルコニーで演説する議長と、怒声を上げる住民
黒潮の首都、評議会前。潮見玄吾議長の演説に、住民から怒声が飛んだ。
戦況エスペランサ3

皇国、三度目の遷都 
首都また「エスペランサ」

相次ぐ失地に住民動揺 人口3,100人、東の森ではチェス軍の攻撃続く

新しい都と東の森、南の海の図
皇国の新しい首都エスペランサと東の森の戦況。双方の第2軍歩兵が交戦。南方海域では中立駆逐艦の魚雷がチェス商船に命中した。

エスペランサ皇国が三度目の首都を定めた。名はこれまでと同じエスペランサ。チェス=シロバキア共和国軍によって首都を相次いで奪われ、そのたびに都を移してきた皇国は、再び新たな土地に政府を置くことになった。

前号まで首都だった町は今もチェス領にある。皇国の人口は5,500人から3,100人へ減少し、兵力も34,500人から32,700人に減った。東の森では両軍の歩兵がなお交戦しており、首都を移した後も戦闘は収まっていない。

三度掲げられた首都の名

晴れ渡る新都では、役所に運び込まれる文書箱や家財を積んだ荷車が通りを行き交った。新しい庁舎の入口には「エスペランサ」の名が掲げられた。

「今度の都は、いつまで持つのだろう」

荷を運ぶ住民が漏らした言葉には、遷都を繰り返す皇国の不安がにじむ。

一度目の首都を失い、移転した先も奪われた。新都を置いたとはいえ、旧都の家屋や商店はチェスの支配下に残されている。故郷を離れた人々にとって、首都の名を移すことと、元の暮らしを取り戻すことは同じではない。

皇国は国の食料を1,220,300トン保有している。しかし、深刻なのは働き手の不足だ。今週の不足人数は15,400人に達している。軍の維持に加え、役所や農地、町の商いを立て直すにも人が要る。

新首都の建設を急ぐ一方で、失地から逃れてきた住民の住まいや働き口をどう確保するのか。皇国政府は相次ぐ敗退への説明とともに、生活再建の道筋を示す必要がある。

東の森、チェス軍が攻勢

新都の南に位置する「東の森」では、チェス軍と皇国軍の第2軍歩兵が交戦した。

今週、チェス軍が皇国軍に与えた損害は2,800人。皇国軍がチェス軍に与えた損害は500人だった。

前号もチェス軍は皇国軍に2,600人の損害を与え、皇国軍の戦果は500人にとどまった。二週を通じてチェス軍が与えた損害は5,400人、皇国軍は1,000人となる。

皇国軍は反撃を続けているが、首都の移転を重ねながらの戦いは厳しい。チェスの兵力154,000人に対し、皇国は32,700人。軍勢の規模にも大きな開きがある。

新首都の南にある「東の森」で続く戦闘は、皇国が再び都を失うことなく持ちこたえられるかを左右する。

南の海、チェス商船に魚雷命中

南方海域では、中立の駆逐艦がチェス=シロバキア共和国の商船に魚雷を命中させた。商船は沈没を免れた。

この海域では、耐久値が3、4、5となった商船三隻が記録されている。

陸上で皇国軍を押すチェスも、海上では攻撃を受けている。商船は軍艦ではないが、物資を運ぶ海上交通の担い手である。その安全が脅かされれば、陸上の戦闘とは別の形で交易に影響が及ぶ。

ただ、今回の攻撃がチェスの輸送活動にどこまで影響するかは、今後の航海の状況を待つことになる。

別戦線 なのです、残党の油田と兵站基地占領

なのです主義人民共和国軍は、旧シンジケート連邦政府残党が保有していた海底油田と兵站基地を占領した。兵站基地では予備兵1,000人を奪った。

海底油田は石油の供給拠点、兵站基地は軍の補充を担う施設である。残党は同じ週に資源と補充の拠点を失った。

今週、なのです軍が残党軍に与えた損害は3,000人、残党軍がなのです軍に与えた損害は1,200人。累計戦果はそれぞれ約98,000人、約41,200人となった。

残党の首都プライムはなお同軍の支配下にあり、戦闘は続いている。

エスペランサ皇国の国勢
項目前号今号
人口5,500人3,100人
兵力34,500人32,700人
人手不足—15,400人
国の食料—1,220,300トン
首都エスペランサエスペランサ
天候—晴れ
皇国・チェス戦線
項目皇国チェス
今週相手に与えた損害500人2,800人
前号相手に与えた損害500人2,600人
現在の兵力32,700人154,000人
現在の人口3,100人862,300人
南方海域
攻撃側中立駆逐艦
攻撃対象チェス商船
攻撃方法魚雷
結果命中、沈没せず
商船の耐久値3・4・5
社会いのらと火災4

怪獣いのら、なのですの町襲う
家々を踏み潰す 住民は避難

チェスでまた大火、二期で3万6,500人犠牲 職求め2万5,400人越境

巨大な緑の怪獣が町の家を踏み潰している
なのです主義人民共和国の町。怪獣いのらが住宅街に侵入し、家々を踏み潰した。

なのです主義人民共和国の町を怪獣いのらが襲い、住宅街に大きな被害が出た。巨体は通りを踏み荒らし、家々を押し潰した。住民は着の身着のまま逃げ出し、壊れた家屋の周囲には瓦礫が積み重なった。

同国では別の町でも火災が発生し、2,700人が犠牲となった。各国の都市や町で発生した火災による死者は、合わせて15,700人に上る。

怪獣が去った町 家を失った住民

いのらが通った住宅街では、倒れた柱や屋根材が道を塞いだ。住民は瓦礫の中から家財を運び出し、壊れずに残った家には行き場を失った人々が身を寄せた。

「また来たら、どこへ逃げればいいんだ」

家を失った住民からは、怪獣の再来を恐れる声が上がった。

怪獣が町を去っても、住民の暮らしは戻らない。屋根を失った家には住めず、商店も営業を再開できない。住民の避難場所を確保し、道路を開き、家屋を建て直す仕事が残されている。

なのですは旧シンジケート連邦政府残党との戦争も続けている。軍事作戦と並行して、被災した町の復旧にも人手を割かなければならない。

チェス、二期続けて大火

チェス=シロバキア共和国では、一つの都市で6,600人、一つの町で3,900人が火災の犠牲となった。今週だけで10,500人に達する。

前号もチェスでは五つの都市と町で計26,000人が死亡した。二期の犠牲者は合わせて36,500人。相次ぐ火災によって、共和国の市街には焼け跡が増え続けている。

火災はチェスだけではない。なのですの町で2,700人、泰平天国の町で2,500人が命を落とした。各国を合わせた今週の死者は15,700人だった。

家を焼かれた住民には当面の寝床と食料が必要になる。焼失した住宅や商店の再建も急がれる。チェスはエスペランサ皇国との戦争を進める一方、国内で続発する火災への対処を迫られている。

職求め2万5,400人が国境越える

仕事を求めて国境を越える人々の動きも続いている。

カペレナ王国から狐っ娘の尻尾教団へ12,500人が移住した。教団の人口は105,400人から129,300人に増えている。

灰岩王国からオリョルッル王国へは12,900人が移った。オリョルッルの人口は661,500人から702,600人に増加。一方、送り出した灰岩の人口は87,900人から77,700人に減った。

二つの移住を合わせると25,400人になる。

教団とオリョルッルには新たな働き手が加わる。商店や農地、工場にとって人手の増加は歓迎される一方、短期間に大勢を迎え入れる土地では、住居の確保が急務となる。

働き口を求めて故郷を離れる人々にとっても、移住は容易ではない。仕事が見つかるまでの生活費、家族の住まい、慣れない土地での暮らしが待っている。

人口を増やした国が新住民をどう迎えるか。そして働き手を送り出した国が、残る人々の生活と産業をどう支えるか。国境を越えた人々の行く先は、両国の社会を左右する。

今週の火災犠牲者
国・場所死者
チェス・都市6,600人
チェス・町3,900人
なのです・町2,700人
泰平・町2,500人
合計15,700人
チェスの火災被害
期間死者
第128期26,000人
第129期10,500人
二期合計36,500人
国境を越えた人々
移住元移住先人数
カペレナ狐っ娘の尻尾教団12,500人
灰岩オリョルッル12,900人
合計25,400人
関係国の人口(人)
国前号今号増減
狐っ娘の尻尾教団105,400129,300+23,900
オリョルッル661,500702,600+41,100
灰岩87,90077,700−10,200

人口の増減は、上記の移住人数と必ずしも一致しない。

経済食料と相場5

黒潮、民間食料5,000トンに回復
国に922,500トンの備蓄 配給遅れに批判

黒潮の国庫11,420億円 旧シンジケート政府残党、民間食料なおゼロ

黒潮自治国の民間食料在庫が、ゼロから5,000トンに回復した。国の食料備蓄は922,500トン、国庫には11,420億円が残る。しかし、民間の食料在庫は前号まで底をついており、政府の配給が遅れたことへの不満が高まっている。

カペレナ王国との戦争で都市と兵站基地を失った黒潮では、首都の住民が潮見玄吾議長の演説中に食料政策を批判した。国の倉には大量の食料がありながら、民間には行き渡らなかったとして、政府の責任を追及している。詳報は2面。

配給の遅れ、政府への不満強く

黒潮の国の食料備蓄は、前号の943,500トンから922,500トンへ21,000トン減少した。一方、民間在庫は5,000トン増えた。

政府が保有する食料と、民間の市場や倉庫にある食料は別に集計される。今回の民間在庫の回復が、政府備蓄の放出によるものかどうかは明らかになっていない。

住民が問題にしているのは、食料不足を補えるだけの国の蓄えがありながら、配給が後手に回ったことだ。都市を失い、生活物資の輸送にも負担がかかる戦時下では、必要な場所へ食料を届けることが急がれる。

民間在庫が5,000トンに増えたことは、ひとまず明るい材料となった。だが、供給を安定させるには継続した配給と流通の立て直しが欠かせない。政府には食料の放出と輸送を急ぐことが求められる。

旧シンジケート連邦政府残党では、民間食料在庫が依然としてゼロのままだ。国の備蓄は201,300トンから185,900トンへ減少した。残党も戦争を続けるなか、民間への食料供給が課題となっている。

オリョルッル、国庫10,684億円に

各国の財政では、オリョルッル王国の国庫が9,168億円から10,684億円へ、1,516億円増加した。チェス=シロバキア共和国も10,476億円から11,373億円へ897億円増えた。

一方、カペレナ王国は2,801億円から2,163億円へ638億円減少。なのです主義人民共和国は123億円減の5,017億円、黒潮自治国は98億円減の11,420億円となった。

オリョルッルは今週、灰岩王国から12,900人を受け入れた。同国の民間食料在庫は61,000トン増加し、321,300トンとなっている。

狐っ娘の尻尾教団もカペレナから12,500人を受け入れ、民間の食料在庫を16,000トン増やした。

移住者を迎えた両国では食料の蓄えが増えている。人口の増加に合わせ、住まいと食料を確保することが当面の課題となる。

弾薬・工業品、そろって値下がり

弾薬の相場は93.52から92.08へ1.44下がった。前号は値上がりしていたが、今週は再び下落に転じた。

工業品は67.57から66.51へ1.06下落。前号も68.54から67.57へ値下がりしており、二期連続の下落となった。

木材は3.20で横ばい。鋼鉄12、石油7.2、燃料6.8、石材5.6、鉱石4.8も前号から変わらなかった。

弾薬は各国の陸軍が消費する軍需物資である。戦争が続くなか、その相場の動きは交戦国の軍需調達にも関わってくる。

教団の鉄鉱山で落盤 採掘に打撃

狐っ娘の尻尾教団が保有する鉄鉱山で落盤が発生し、鉱山の段階が10から9に下がった。蓄積量も347減少した。

鉄鉱山は弾薬の製造に必要な鋼鉄の供給源となる。今回の落盤は、教団の採掘能力にとって痛手となった。復旧が遅れれば、鋼鉄の生産にも影響が及ぶおそれがある。

各国、資源の売り注文続く

交易市場では、白波王国が鉱石124を提示価格539で売り出した。青海共和国は木材187を538で出品した。

銀嶺は燃料88を538、弾薬6を495で売り出し、アルガリスト帝国は石油82を539、食料600を626で出品した。いずれも売り手が提示した価格で、実際の成約価格ではない。

交易の指標は、あろあろ国が2,249から2,368へ119増加。泰平天国は2,049、青海共和国は1,535で前号と変わらなかった。

航海回数は青海共和国が459回、黒潮自治国が239回、緑丘公国が48回。前号からそれぞれ6回、4回、3回増加した。

港の石倉で食料の袋を数える人々
黒潮の港の倉。奥の棚は厚く、手前に出された袋はまだ少ない。
黒潮・旧シンジケート政府残党の食料事情(トン)
項目前号今号増減
黒潮・国の食料943,500922,500−21,000
黒潮・民間食料05,000+5,000
旧政府残党・国の食料201,300185,900−15,400
旧政府残党・民間食料000
各国の国庫(億円)
国前号今号増減
オリョルッル9,16810,684+1,516
チェス10,47611,373+897
カペレナ2,8012,163−638
なのです5,1405,017−123
黒潮11,51811,420−98
民間の食料在庫(トン)
国今号前号比
あろあろ400,500−26,600
泰平385,200−24,400
カペレナ388,200−500
なのです373,200−30,900
チェス346,900−1,200
オリョルッル321,300+61,000
教団265,700+16,000
黒潮5,000+5,000
旧政府残党00
主要商品の相場
商品前号今号増減
弾薬93.5292.08−1.44
工業品67.5766.51−1.06
木材3.203.200

鋼鉄12、石油7.2、燃料6.8、石材5.6、鉱石4.8は横ばい。

気象空と海6

北の雪、80区画で足踏み
晴れ間広がる秋空 雨は22区画減

皇国の新首都エスペランサは晴れ 灰岩のロシュグリーズでは雨

第129期の天気図
第129期の天候分布。晴れ3,881区画、曇り3,669区画、雨463区画、雪80区画、雷7区画。

第129期の世界は、晴れが前号より67区画増え、3,881区画となった。雨は22区画減って463区画。曇りも45区画減り、3,669区画となっている。

北方の雪は80区画で、前号と同じだった。前期には42区画からほぼ倍増していたが、今期は雪の広がりがひとまず落ち着いた。雷は7区画で変わらなかった。

北国では冬支度急ぐ

北方の雪に覆われた集落では、住民たちが薪や食料を家へ運び込み、冬に備えている。

屋根の雪を払う者、戸口に風よけの板を打ち付ける者。村外れの道では、荷馬車が車輪の跡を残して進んでいた。

「雪が深くなったら、峠を越えるのも一苦労だ。今のうちに運べるものは運んでおかないと」

薪を積んでいた男はそう話した。

雪の区画数は増えなかったものの、前期に広がった雪はまだ北方を覆っている。人々は雪解けを待つのではなく、これから迎える長い冬に備えていた。

新首都エスペランサに青空

エスペランサ皇国が新たに首都を置いたエスペランサでは、晴天となった。

新都では朝から荷車が往来し、移転してきた役人たちが庁舎の窓を開け放って文書の整理に追われていた。幾度もの遷都を重ねた皇国にとって、穏やかな空の下でも戦争は終わっていない。東の森ではチェス軍との交戦が続いている。

チェス=シロバキア共和国の首都、黒潮自治国の首都も晴れ。なのです主義人民共和国の電都、泰平天国の天都にも秋の日差しが降り注いだ。

一方、カペレナ王国のカペナグラード、旧シンジケート連邦政府残党のプライム、狐っ娘の尻尾教団の首都は曇り。オリョルッル王国の首都も厚い雲に覆われた。

ロシュグリーズは雨 石畳に傘の列

灰岩王国の首都ロシュグリーズでは、朝から雨が降った。

岩山の裾に広がる街では、石造りの建物の軒から雨水が滴り、通りを行く人々が傘を寄せ合って歩いた。朝市の商人たちは商品を布で覆い、買い物客を軒下へ招き入れていた。

「こんな日は客足も鈍るけど、雨が止めばまた賑わうさ」

店先に立つ商人は、雨脚を見ながらそう笑った。

紅峰公国の首都ローテンホルンは晴れ。同じ秋でも、各国の首都には異なる空模様が広がっている。

秋の海、潮目を追う漁船

沖合では暖流と寒流が接している。海流図には、それぞれの流れが矢印で描かれている。

夜明け前の港では、漁師たちが網を船に積み込み、まだ暗い海へ乗り出す支度をしていた。

「潮が変わるところを探すんだ。魚はじっと待っていても来ないからな」

年配の漁師は海面を指さして話した。小舟の船頭たちは沖の潮目を確かめ、それぞれの漁場へと向かっていった。

秋は日が暮れるのも早い。港では帰りが遅くなる船のために灯りを用意し、家族が水揚げを待っている。

もっとも、海に出る船乗りの心配は天候だけではない。黒潮自治国の沿岸では艦砲射撃が続き、フィルノアでは二週で市民400人が命を落とした。

晴れた空の下でも、漁に出ることをためらう者がいる。黒潮沿岸の戦況は2面で詳報する。

世界の天候(区画)
天候前号今号増減
晴れ3,8143,881+67
曇り3,7143,669−45
雨485463−22
雪80800
雷770
合計8,1008,1000
主な首都の天候
天候主な首都
晴れ天都、電都、エスペランサ、黒潮の首都、チェスの首都、ローテンホルン
曇りカペナグラード、プライム、オリョルッル王国の首都、狐っ娘の尻尾教団の首都
雨ロシュグリーズ
第129期の海流図
暖流と寒流の流れ。矢印は海水の流れる方向を示す。
入門第21回7

第21回 農場と食料
農地を広げても働き手が要る

通常の農場は20億円・1期 置けるのは平地、隣接条件にも注意

港の隣の平地で、畑の収穫を運ぶ人々
平地の農場。隣には港の町がある。

町が大きくなり、軍隊が増えると、国で必要になる食料も増えていく。食料を確保する手段の一つが農場の整備だ。だが、畑を増やすだけでは十分ではない。作物を育てるには、そこで働く人々が必要になる。

通常の農場は20億円、整備に1期

通常の農場は20億円で整備でき、完成までに1期を要する。規模は10,000人から60,000人。農場の規模は働き手を受け入れる能力に関わる数字であり、その人数の住民が畑に住んでいるわけではない。

費用を多く払って急いで整備する「早い農場」もある。費用は180億円だが、期を使わずに建設できる。ただし、置けるのは自国領だけである。

畑を置く平地と隣の土地

農場を置けるのは平地だ。建設する平地そのものか、その隣に自国の陸地または港がなければならない。海に浮かぶ艦船は、この条件を満たす隣の土地には数えられない。

自国領から離れた平地に、いきなり農場を整備することはできない。土地を選ぶときは、費用だけでなく周囲の領地や港も調べる必要がある。

国境の農場では、他国の農場を追加整備した結果、その畑の領有が変わることもある。食料生産に役立つ施設だからこそ、国境付近では土地の扱いにも注意が要る。

働き手は農業を優先

国の働き手は、まず農業へ優先して割り当てられる。畑を広げても働き手が足りなければ、期待したほどの食料は得られない。

また、農業に多くの人を割けば、鉱山や工場、市場へ回せる人手は少なくなる。生産施設を増やすときには、国の人口と働き手の余裕にも目を向けたい。

国の備蓄と民間の食料は別

食料には、国が保有する備蓄と民間の食料在庫がある。この二つは別に集計され、国が多くの食料を持っていても、それだけで民間に十分行き渡っているとは限らない。

黒潮自治国では、今週の国の食料備蓄が922,500トンある一方、民間食料在庫は前号のゼロから5,000トンに回復したばかりだ。配給の遅れをめぐる住民の不満は5面でも報じている。

農場を整備し、働き手を確保し、食料を必要な場所へ届ける。この三つを切り離さずに考えることが、国の暮らしを支える第一歩になる。

次回は、占領の仕組み。

農場整備の基本
通常の農場20億円・1期
規模10,000~60,000人
整備できる土地平地
隣接条件その平地か隣に自国の陸地または港
海上の艦船隣接条件には数えない
早い農場180億円・期を使わない
早い農場の設置自国領のみ
農場と食料の要点
働き手農業を優先
他産業農業に人手を割くと使える働き手が減る
国の食料国が保有する備蓄
民間の食料国の備蓄とは別に集計する在庫
黒潮自治国の食料(第129期)
国の食料備蓄922,500トン
民間の食料在庫5,000トン
前号の民間在庫0トン
国特集灰岩8

灰岩から12,900人、職求め国外へ
雨の都ロシュグリーズ 石工の町に別れの声

人口77,700人に減少 働き手たちの行き先はオリョルッル

雨の石畳に並ぶ石の皿と丸いパン
ロシュグリーズの朝市。石工の手で作られた皿と、岩塩をきかせた丸パンが並ぶ。

灰色の岩山に囲まれた灰岩王国の首都ロシュグリーズ。石造りの家々が並ぶこの都で、今週、旅立つ人々の姿が見られた。

仕事を求めて灰岩王国からオリョルッル王国へ渡った人は12,900人。灰岩の人口は前号の87,900人から77,700人に減った。

灰岩は現在、他国との戦争をしていない。それでも、故郷を離れて働き口を探す人々がいる。

岩山の都、石を刻む職人たち

ロシュグリーズでは、岩山から切り出した石が建物の壁や舗道に使われている。雨の日には石畳が鈍く光り、軒下には雨宿りをする人々が集まる。

町の一角には石工たちの工房が並ぶ。職人は石の塊を台に載せ、鑿と槌を使って少しずつ削り出していく。

つくられるのは、石皿や鉢、石灯籠、建物の装飾など。小さな皿一枚にも手間がかかる。

「石の筋を見誤ると、最後の一削りで割れてしまう。力任せに叩けばいいってものじゃない」

工房の主人は、作りかけの石皿を手に取って話した。縁を指でなぞり、わずかな凹凸を確かめる。石を削る乾いた音が、雨の降る通りに響いていた。

岩山の都では、石は建物を造る材料であると同時に、人々の生計を支える品でもある。

朝市に並ぶ石皿と岩塩パン

ロシュグリーズの朝市では、こうして作られた石皿が店先に積まれる。

厚手の丸い皿、浅い鉢、小さな杯。客は一つずつ手に取り、重さや手触りを確かめて買っていく。

その隣には、岩塩で味を整えた丸パンが並んでいた。焼き上がったパンを割ると湯気が立ち、香ばしい匂いが広がる。

市場の食堂では、石皿に盛った豆の煮込みにパンを浸して食べる客の姿があった。石工や荷運び人が仕事の合間に立ち寄り、温かい食事を取る。

雨の日は足元が悪い。店主たちは布を張った軒下に商品を寄せ、買い物客は傘をたたんで店に入る。

この朝市には、石を削る職人、パンを焼く者、荷を運ぶ者、そして品を買いに来る住民たちの日々の暮らしがある。

故郷を離れる12,900人

この町を擁する灰岩王国で、大きな人口移動が起きた。

今週、仕事を求めてオリョルッル王国へ移住したのは12,900人。現在の灰岩の人口77,700人と比べれば、約6人に1人に相当する規模だ。

移住の準備を進める家では、衣類や道具を箱に詰め、持っていけない家具を親戚に預けていた。

石工の仕事を手伝ってきた若者は、使い慣れた小さな鑿を布に包んで荷物に入れた。

「向こうで仕事が見つかればいい。何年か働いて、金を貯めたらまた帰ってくるつもりだ」

見送りに来た母親は、息子に厚手の上着を渡した。

「向こうの冬がどれほど寒いか知らないだろう。手紙だけは寄越しなさい」

旅立つ者にも、送り出す者にも、それぞれの暮らしがある。

王国の人口は前号から10,200人減少した。国外へ移住した12,900人とは一致しないが、人々の流出が国の社会に与える影響は小さくない。

働き盛りの人々が去れば、工房や商店、農地でも人の入れ替わりが起きる。残された家族は、離れた土地から届く便りを待つことになる。

国庫5,678億円、戦争のない王国

灰岩王国の現在の人口は77,700人、兵力は20,000人。国庫には5,678億円、国の食料備蓄は695,000トンがある。

人手不足はゼロで、他国との戦争もしていない。

それでも、仕事を求めて国外へ出る人々がいる。国全体で人手不足が生じていなくとも、一人ひとりの希望する仕事や暮らしが、その国の中ですべて見つかるとは限らない。

オリョルッル王国では今週、人口が661,500人から702,600人へ増えた。灰岩からの移住者を含め、多くの人々が新たな生活を始めることになる。

一方、ロシュグリーズでは雨に濡れた石畳の上を、今日も商人や職人たちが行き交っている。

工房では槌の音が響き、朝市では丸パンが焼き上がる。遠くへ去る者を見送ったあとも、灰色の岩山の都にはいつもの一日が続いていく。

灰岩王国
首都ロシュグリーズ
人口77,700人
兵力20,000人
国庫5,678億円
国の食料備蓄695,000トン
人手不足0人
首都の天候雨
対外戦争なし
灰岩の人口と移住
前号人口87,900人
現在人口77,700人
人口増減−10,200人
オリョルッルへの移住12,900人

移住者12,900人は、現在人口77,700人の約16.6%に相当する。

移住先・オリョルッル王国
前号人口661,500人
現在人口702,600人
人口増減+41,100人
灰岩からの移住者12,900人

両国間の人口移動については4面にも詳報。

文化紅峰9

赤い峰が染まる頃、本屋に人集う
ローテンホルン、夕暮れの読書会

郷土の小説『赤い稜線』 道を間違えた旅人の沈黙を読む

赤い岩の峰と、窓辺の机に置かれた薄い本
ローテンホルンの書店。窓の向こうには赤い峰がそびえ、机には小説『赤い稜線』が置かれている。

紅峰公国の首都ローテンホルンでは、夕暮れになると北の岩山が赤く染まる。山の裾に連なる家々にも西日が差し、やがて一軒、また一軒と窓に明かりがともり始める。

町の坂道にある小さな書店では、その時刻に合わせて読書会が開かれた。店の奥に並べられた椅子には、仕事帰りの職人や学生、買い物を終えた住民たちが腰掛けた。

手元に置かれているのは、この町を舞台にした薄い小説『赤い稜線』。峰を歩く旅人が道を間違え、日暮れ前に町へ引き返す物語だ。

一度の道迷いを描く『赤い稜線』

『赤い稜線』の主人公は、山の道をよく知っているつもりの旅人である。

町を出て赤い峰へ向かった男は、二つに分かれた尾根の一方を選ぶ。ところが、登り始めてしばらくすると、見覚えのある岩が一向に現れない。

立ち止まって地図を開いても、自分がどこで道を間違えたのか分からない。来た道を戻ればよいと頭では分かっていても、ここまで登った時間が惜しく、男はしばらく先へ進んでしまう。

ようやく引き返す決心をしたころには、岩肌が夕日に染まり始めていた。

男は日暮れ前に町へ帰り着く。怪我もなく、助けを呼ぶこともなかった。しかし、どの尾根で道を間違えたのかと尋ねられると、どうしても答えられない。

物語は、帰宅した男が汚れた靴を脱ぎ、窓から峰を眺めるところで終わる。

読者を引き留める、帰り道の長さ

山を歩く場面は丁寧だ。靴の底で小石が滑る感触、急な斜面で息を整える間、目印と思っていた岩が実は別の岩だったと気付いたときの動揺。読んでいるうちに、男が道を引き返すことをためらった理由が伝わってくる。

とりわけ印象に残るのは、道を間違えた瞬間よりも、そのあとである。男は自分の判断を疑いながらも、もう少し歩けば正しい道に出るはずだと考える。その迷いが幾度も繰り返される。

一方で、山を下りてからの場面は短い。町に戻った男の暮らしや、周囲の人々との関係をもっと読みたかったという読者もいるだろう。

だが、余計な説明を省いた結末には独特の後味がある。男が黙っていた理由を、読者は自分の経験に照らして考えることになる。

書店で開かれた読書会でも、最後の場面をめぐって意見が分かれた。

「恥ずかしかったんでしょう。山を知っていると言って出かけたのに、迷ったなんて言えなかったんですよ」

年配の男性がそう話すと、向かいに座った学生は首を振った。

「恥ずかしいというより、自分でもまだ納得できていないんじゃないでしょうか。どこで間違えたのか、最後まで分からなかったんですから」

書店の主人は、二人の話を聞きながら本を閉じた。

「この話、読む人によって帰り道の長さが違うんですよ」

書店の窓辺に、小さな詩の箱

ローテンホルンの書店では、本を買いに来た客が短い詩を書き残していくことがある。

窓辺には木製の小箱が置かれ、脇には紙と鉛筆が用意されている。名前を書かなくてもよい。気に入った詩があれば、店主が掲示板に貼り出す。

山の赤い色、雨の日の石段、仕事を終えた家族が帰る家。題材は身近なものばかりだ。

今週、箱に入っていた一編を紹介する。

詩「峰の赤」

窓辺の本を閉じると
まだ頁だけが赤かった
山は黙って色を失い
坂の靴音が一つ近づく

昼に道を間違えた人が
返さずにいた地図をたたむ
二筋の鉛筆の線のうち
薄い方だけを指でなぞる

灯をつけた店の奥から
紙袋の触れる音がする
山道の名を尋ねる声に
店主は鍵を掛けずにいた

赤い峰の下、今夜も本を開く

読書会が終わるころ、窓の外の峰はすでに暗くなっていた。

店主は椅子を片付け、窓辺に置かれた詩の箱を開ける。折りたたまれた紙が二枚、底に残っていた。

一人の客が帰り際に振り返り、来週も読書会はあるのかと尋ねた。

「ええ。本があるうちは続けますよ」

店主はそう答え、明かりのともる店内へ戻っていった。

紅峰公国
首都ローテンホルン
人口82,600人
兵力20,000人
国庫6,948億円
国の食料備蓄801,700トン
首都の天候晴れ
対外戦争なし
今週の一冊
書名『赤い稜線』
著者無署名
舞台ローテンホルン北方の岩山
内容道を間違えた旅人が、日暮れ前に町へ帰る物語
紹介帰り道の心理を描いた短編小説

文化小欄 窓辺の詩箱

ローテンホルンの書店では、訪れた客が詩を投函できる小箱を窓辺に置いている。

名を書かずに寄せられた詩も、店主が選んで掲示板に貼り出す。今週紹介した「峰の赤」も、その箱に残されていた一編である。