合同
第123・124期
トレーディア新聞社
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トレーディア
新聞THE TREDIA SHIMBUN
トレーディア暦2年7月第4週
8月第1週 夏季
本日10面
主な記事 残党の「プライム」再び陥落 フィルノアの工場消失 皇国首都で攻防 テキシャへ1万4,100人 弾薬91.49 国特集 泰平天国
総合名を移した町1

「プライム」が陥落 
名は隣町へ移った

第123期に占領し、翌週は隣町へ

シンジケート連邦の旧政府残党が、新たな首都として「プライム」を名乗っていた東方の町が、第123期になのです軍の占領下に入った。翌第124期、残党は隣接する別の町を再び「プライム」と定めた。なのです軍に奪われた旧首都プライムは、現在も同軍の支配下にある。

この名をめぐる攻防は、第119期に親なのです派のクーデターで旧政権が倒されて以来、抵抗を続けるシンジケート側の苦境を映している。旧首都を失った後、残党は人口6,300人の東方の町に首都の名を移していた。その町も陥落し、拠点を隣へ求めることになった。

なのです側は前号までに、旧プライムの占領を自国領土の回復と位置付け、オリョールの森で発見されたという古代壁画まで持ち出して領有を主張してきた。一方の旧政府残党は、旧首都を奪還できないまま、別の町に同じ名を掲げて抗戦を続けている。

第124期には、なのです軍が旧プライム東方の町をさらに占領した。町に蓄えられていた食料4万3,400トンも占領側へ渡った。残党側の人口は6万7,400人、兵力は4万2,300人。これに対し、なのです軍は44万8,500人の兵力を擁する。

戦闘も止んでいない。この二週間、なのです軍が相手に与えた損害は計1万1,700人、旧政府残党側の戦果は5,600人に上った。旧首都周辺と東方では、海兵、山岳兵、装甲部隊による交戦が続いている。

旧首都から東方の町へ、さらにその隣町へ。プライムの名を移しても、軍事的な後退が覆るわけではない。旧政府残党は新たな拠点を掲げて抵抗を続けるが、その足元では、なのです軍の占領地域が広がっている。

曇り空の木の町で、荷を抱えて歩く人びとと、道に並ぶ兵士
木の家が並ぶ町の道で、荷を抱えた人びとが歩き、兵士が列を作っている。前号まで「プライム」と称していた東方の町は、第123期に占領された。残党は翌週、隣町へ首都の名を移した。
戦況旧プライムの周囲2

二週続けて激戦
装甲が東方を攻撃

第28軍海兵も交戦 残党は山岳兵を軸に抵抗

なのです軍とシンジケート旧政府残党の戦闘は、第123・124期を通じ、占領下の旧首都プライム周辺と東方で続いた。なのです軍は海兵と装甲部隊を投入し、東方の山岳兵に繰り返し攻撃を加えた。残党側も反撃を続け、双方に損害が出ている。

第123期、旧プライムではなのです第28軍の海兵部隊が敵歩兵部隊を壊滅させた。部隊の規模は明らかではない。同じ週、第9軍の装甲部隊は東方の山岳兵に2,800人の損害を与え、なのです第4軍の山岳兵も敵歩兵に攻撃を加えた。

旧政府残党側も東方で抵抗した。第3軍の山岳兵は、なのです側の山岳兵部隊に1,400人の損害を与えた。旧首都の北でも歩兵と山岳兵の交戦が起き、占領後も周辺の戦線は落ち着いていない。

翌第124期、なのです軍の海兵部隊は旧首都方面で攻撃を続行した。東方では第9軍装甲部隊が再び山岳兵を攻撃し、2,800人の損害を与えた。旧政府残党の山岳兵と歩兵も反撃し、複数の地点で戦闘が続いた。

同じ週、旧政府残党は自国領の山へミサイルを撃ち、多数が負傷した。その山は、同じ週のうちになのです軍の占領下に入った。

旧首都とその東方の戦闘は、プライムの名をめぐる争いが、なお武力で続いていることを示している。二週間と開戦以来の戦果は、右の表のとおりである。

旧首都周辺と東方の戦場。海兵、装甲兵、山岳兵

第124期の東方。旧首都の周辺で海兵と歩兵が向き合い、町には「プライム」の名が付いている。右上では装甲兵と山岳兵が撃ち合っている。

なのですと残党の戦果
なのです残党側
この二週1万1,7005,600
開戦以来約6万4,400約2万9,700

戦果は、相手に与えた損害である。

戦況フィルノア3

フィルノアの工場消失
カペレナ軍、砲撃続行

二週で人口1,700人減 駐留部隊も壊滅

カペレナ王国軍の攻撃を受け続ける黒潮自治国の現代都市フィルノアで、産業施設の被害がさらに拡大した。前号で規模が半減していた近隣の工場は、第124期に施設そのものが失われた。市の人口も第122期の9,100人から第123期には8,200人、第124期には7,400人へと減少した。

カペレナ王国軍はこの二週間、黒潮側の沿岸と陸上部隊に攻撃を続けた。第123期には王国北方軍の装甲兵が黒潮第32軍の空兵を攻撃し、1,400人の損害を与えた。王立北方軍の歩兵も同じ方面で攻勢に出た。艦隊も沖から砲撃を行い、フィルノアの周辺は戦火にさらされた。

第124期も戦闘は続き、装甲兵と歩兵が黒潮軍の空兵部隊を攻撃した。王国海軍の艦砲射撃は続き、同じ沿岸では黒潮軍の駐留部隊が壊滅した。

フィルノアの人口は二週間で1,700人減り、工場も失われた。軍の戦闘だけでなく、都市の生活と生産を支えてきた基盤にも被害が及んでいる。

陸上では黒潮軍も反撃を続けた。王国側の歩兵・装甲兵と黒潮側の歩兵・空兵が交戦し、二週間の戦果はカペレナ軍が1万2,100人、黒潮軍が3,700人。開戦以来の累計戦果は、それぞれ10万6,600人、8万2,300人に達している。

兵力ではカペレナ王国14万5,800人、黒潮自治国8万3,500人。海岸と内陸の双方で、戦闘は続いている。

海上で魚雷命中 海賊船に損傷

【海戦短信】黒潮の近海では駆逐艦の魚雷が海賊船に命中し、船体が損傷した。攻撃後も同船は沈んでいない。

カペレナと黒潮の沿岸の戦場
フィルノアの人口
第122期9,100人
第123期8,200人
第124期7,400人
カペレナと黒潮の戦果
カペレナ黒潮
この二週1万2,1003,700
累計10万6,6008万2,300

戦果は、相手に与えた損害である。工場は第124期に消えた。

国際南と北4

エスペランサ首都で攻防
守備を失い、皇国は反撃

北の町と西の村が陥落 首都は残る

エスペランサ皇国の首都周辺で、チェス=シロバキア共和国軍の攻勢が続いている。第123期には首都にいた皇国第1軍の歩兵部隊がチェス第3軍との戦闘で壊滅し、北方の町もチェス側の占領下に入った。首都そのものは、依然として皇国の領土にとどまっている。

翌第124期、皇国軍の歩兵部隊は首都に入ったチェス軍の歩兵に反撃し、1,700人の損害を与えた。皇国側にも1,000人の損害が出た。同じ週には首都の西の村もチェス軍に占領され、周辺で皇国の支配が後退した。

第124期時点で、エスペランサ皇国の人口は3万700人、兵力は3万300人。一方のチェス=シロバキア共和国は人口74万5,900人、兵力13万2,800人を擁する。隔たりがあるなか、皇国軍は首都を拠点に抵抗を続けている。

首都で反撃が行われた一方、近隣の町と村は相次いで占領された。都を守る戦いと、周囲の領土の喪失が、同時に進んでいる。

三国との戦争が続く
緑丘軍は7万1,000人

黄砂同盟は青海共和国、緑丘公国、黒潮自治国との戦争を続けている。第124期には青海との戦争が五週目、緑丘との戦争が四週目、黒潮との戦争が三週目に入った。

黄砂同盟の兵力は3万8,000人。青海共和国は8万2,200人、緑丘公国は7万1,000人を擁する。これらは国全体の兵力であり、黄砂方面の前線に置かれた人数ではない。

オリョルッルへ領土を返還
駐留の部隊も撤収

なのです主義人民共和国は、オリョルッル王国の領域内にあった自国の支配地点を同王国へ譲り、駐留部隊を撤収させた。オリョルッル王国は戦争をしておらず、人口は61万4,400人である。当該地点の統治は、オリョルッル側へ移った。

エスペランサ首都周辺の戦場

皇国の首都周辺。首都そのものは皇国領のまま、北の町と西の村はチェス側に入った。オリョルッルへの返還は、この図の外である。

第124期、首都での反撃
皇国が与えた損害1,700人
チェスが与えた損害1,000人
社会人と火5

オラニウムから移る
1万4,100人、テキシャへ

働き口を求めて 受け入れたのはテキシャ

第124期、オラニウム連邦からテキスタン共和国へ、仕事を求める1万4,100人が移り住んだ。移住者を受け入れたのは、織物と市場の町として知られるテキスタンの首都テキシャである。

今回の移動を経て、オラニウム連邦の人口は16万3,400人、テキスタン共和国は28万8,400人となった。テキシャでは以前から、織物や染物を扱う店、喫茶、市場が紙面に登場している。織場通りに通う人びとのなかに、オラニウムから移ってきた者の姿が加わる。

国境を越えた移動は、送り出す国にとっては人手の流出であり、受け入れる国にとっては新たな働き手の到来でもある。

火災が相次ぐ
二週で2万9,700人減

なのです主義人民共和国とチェス=シロバキア共和国で、町や都市の火災が相次いだ。第124期にはなのですの現代都市で人口が6,000人減ったほか、同国の三つの町でも合計8,200人減った。チェス側も都市で5,800人、町で3,700人減った。

この週、火災のあった六地点で減った人口は2万3,700人。前週の第123期にも、なのですの町で2,800人、チェスの町で3,200人減り、二週の合計は2万9,700人となる。公表されているのは人口の減少であって、死者の数ではない。

第123期には、スルガの工場も火災で失われた。住宅だけでなく、生産の施設にも被害が及んだ。

黒潮の人手不足、1万5,800人に 緑丘も高い水準

黒潮自治国の働き手の不足は、第123期の5,700人から第124期には1万5,800人へ広がった。カペレナ王国との戦争が続くなか、不足は1万人以上増えた。

黄砂同盟と交戦中の緑丘公国では、不足が第123期に2万3,200人まで増えた後、第124期は1万4,600人となった。減ったとはいえ、前号の1万2,900人を上回る。人口は4万2,100人から、2万8,900人、2万4,300人へと減っている。

戦争による損耗と、国内の生産に必要な働き手は、同じ数字ではない。

火災で減った人口
第123期第124期
なのですの現代都市—6,000
なのですの町2,800計8,200
チェスの都市—5,800
チェスの町3,2003,700
週の合計6,0002万3,700

第123期はスルガの工場も火災で失われた。空欄は、その週の公表がない。

働き手の不足
第122期第123期第124期
黒潮—5,7001万5,800
緑丘1万2,9002万3,2001万4,600
経済相場と国庫6

弾薬相場、91.49に上昇
工業品は70.75へ続落

二週間で値動きが分かれる 戦争の続く市場

世界市場で弾薬の値上がりが続いた。前号の87.72から第123期には88.71、第124期には91.49へ上昇した。一方、工業品は72.96から71.72、さらに70.75へと値を下げ、主要な品目で相場の方向が分かれた。

この二週間、なのです軍とシンジケート旧政府残党の戦闘、カペレナ王国と黒潮自治国の戦争、黄砂同盟をめぐる三国との戦争が続いている。弾薬は戦時の軍需物資だが、今回の値上がりがどの国の取引によるものかは、明らかでない。

鋼鉄は12、石油は7.2、燃料は6.8。石材5.6、鉱石4.8、木材3.2も前号から動かなかった。市場全体が一様に値上がりしているわけではなく、弾薬と工業品の対照が際立つ。

なのですの国庫、7,007億円に 失業率は47.75%

なのです主義人民共和国の国庫は、第122期の2,045億円から第123期に6,257億円、第124期に7,007億円へ増えた。この二週間の増加は4,962億円である。

政府筋によれば、失業率は前号の44.69%から47.75%へ上がった。支配する範囲は広がっている。国庫は厚くなったが、働き口は増えていない。

国際競売に食料 緑丘・黄砂が各600を出品

国際競売では、黄砂同盟と緑丘公国がそれぞれ食料600を出品した。掲示の価格は緑丘が658、黄砂が735である。両国が戦争を続けるなか、食料の売り出しが並んだ。

軍需では金野伯爵領と紅峰が弾薬を各6出品し、掲示の価格はそれぞれ375、473である。表に掲げたのは出品と掲示の価格であり、落札の成否は書いていない。

弾薬と工業品
前号第123期第124期前号比
弾薬87.7288.7191.49+3.77
工業品72.9671.7270.75−2.21
動かなかった相場
鋼鉄12
石油7.2
燃料6.8
石材5.6
鉱石4.8
木材3.2
出品と掲示の価格
出品品量掲示
緑丘食料600658
黄砂食料600735
金野弾薬6375
紅峰弾薬6473

貿易の指標、あろあろが首位

【経済短信】第124期の貿易量の指標では、あろあろ国が1,973で首位となり、泰平天国1,907、青海共和国1,535が続いた。航海距離の指標では青海共和国415、黒潮自治国215、白波王国36となった。

気象空と海7

雨域、1,260区画に拡大
雪は世界の北端へ

天都、黄砂、緑丘は雨

第124期の天気図。雪は北の端

第124期の世界では雨域が1,260区画に達し、前号の1,154区画からさらに広がった。雪は21区画で、前号の16区画から増えた。前号の雪は南の端、今号の雪は北の端にある。

第123期にも雨は1,225区画、雪は21区画だった。二週間を通じて雨が広く、晴れの多い地域と雨の続く地域が並んだ。第124期の晴れは3,632区画、曇りは3,180区画、雷は7区画だった。

第124期の朝、主な空
雨天都、黄砂の首都、緑丘の首都、オリョルッル
曇り前号まで称した町、名を移した隣町、カペナグラード、フィルノア、テキシャ
晴れ電都、旧プライム、黒潮の首都、エスペランサ、狐っ娘の首都、アロランド

漁場16か所を維持
遠洋4隻が満載で帰港

海流の図

【海況通信】世界の漁場は16か所、広がりは156区画で前号から変わらなかった。寒流沿いの漁場が2か所で30区画、暖流と寒流の交わる潮目の漁場が14か所で126区画である。

なのです主義人民共和国の遠洋漁船4隻は、いずれも魚を300まで積み、母港へ戻った。図は海流を示す。

入門資源の山8

資源を掘り出す第一歩
採掘施設と働き手

第16回 施設を使い分ける

山や海底に資源があっても、採掘の施設を整えなければ、国はそれを継続して産出できない。今回は、施設の建設、働き手の入り方、産出物の違い、落盤を整理する。

施設を建てる

採掘場や油田の建設費の目安は120億円、かかる期間は1期である。土地か海域を選び、できたあと、働き手が入ってはじめて掘られる。

何が採れるか

鉄の山には鉱山を設け、鋼鉄を産出する。周囲の六か所に自国の炭坑があると、鋼鉄は五割増す。ウランは、生産の技術が段階3に達してから燃料になり、炭坑の五倍出るが、一回に上限がある。資源のない山には、4期に木材1が自然に入る。伐採は要らない。森は、伐れば木材になる。

地形と産出
地形施設産出
鉄の山鉱山・大鉱山鋼鉄
石の山採石場石材
炭の山炭坑燃料
露天の鉱脈露天鉱脈鉱石
ウランの山ウラン鉱山燃料
石油油田・海底油田石油

働き手の割当て

施設を建てただけでは、資源は増えない。働き手は農業、鉱業、工場、市場の順に入る。農場で多くの人手を使う国では、採掘へ十分な人数が回らないことがある。

今号の実例

第123期には(79,61)、第124期には(73,57)に海底油田が新たに置かれた。落盤で段階や蓄えが減った場は、下の表のとおりである。第124期の(39,47)では、段階が8から7に下がり、蓄え481が失われた。

この二週の落盤
期地点段階失った蓄え
123(81,62)4から30
123(72,24)5から40
123(63,20)6から537
124(77,68)2から15
124(16,17)9から80
124(39,47)8から7481

次回 工場と、三つの工業

国特集泰平天国9

夏の雨に、冬への備え
天都の市場を歩く

根菜を蓄え、道を整える

夏の雨の市場。パンと根菜、湯気の鍋、傘
雨の石畳に、パンと根菜、湯気の立つ鍋。傘を差す人もいる。夏の天都である。

夏の雨が石畳を濡らす朝、泰平天国の首都・天都では市場の軒下に人びとが集まっていた。根菜が籠に積まれ、焼き上がったパンの香りが通りに漂う。店先で温かい碗を差し出した商人は、傘の雫を払う客に「冷めないうちに」と声を掛けた。

夏から始まる備え

通りの奥の食堂「雪灯り」では、根菜と保存肉の鍋が煮えている。冬の料理として親しまれる品だが、店では夏のうちから保存食の仕込みが始まるという。常連は乾かした根菜の束を買い求め、家の棚へ運んでいく。

市場の端には、早くも「春待ちの市」の札が掲げられていた。春の訪れを待つという名の催しを、まだ夏の空の下で知らせるのが、この町の流儀らしい。いま並ぶのは夏の野菜や保存肉で、札だけが先の季節を告げている。

荷車の通る道

天都から南へ向かう道では、濡れた轍の上を荷車がゆっくり進んでいた。薪を積んだ車と、パンを運ぶ車が同じ道を使う。運び手の一人は「門の飾りより、雨の日に荷を運べる道が大事だ」と笑った。

この国が掲げる「北の星に従って南へ」という言葉は、旅人には奇妙に響く。それでも、人びとの暮らしは実際的だ。道を保ち、食を蓄え、季節の変わり目に備える。

泰平天国の人口は35万8,700人、兵力は32万500人。交戦している国はない。食料の備蓄は前週の30万6,900トンから26万8,900トンへ、3万8,000トン減った。次回の国は、アルガリスト帝国。

泰平天国・国勢
首都天都
この朝雨
人口35万8,700人
兵力32万500人
食料26万8,900トン
戦争していない

人口から食料までは、首都ではなく国の数である。天候は天都の朝。

天都・雨の日の歩き方

まず市場通りの軒下をたどる。根菜やパンの店が並び、通りの奥に食堂「雪灯り」がある。朝は買い物の客で混む。食事は、荷車の往来が落ち着くころがよい。

市場の南へ出ると、荷を運ぶ道が続く。濡れた石畳では足元に気を付ける。冬支度の品と、早くも掲げられた春待ちの札が、同じ通りにある。

文化路地と文芸10

朝と夕で顔を変える
アロランドの路地

豆の鍋から串焼きへ 呼び込みがつなぐ一日

港に面した路地。串、薄いパン、果実の水、呼び込み
アロランドの路地。串と薄いパン、果実の水。呼び込みが棒を上げ、港には船のマストが並ぶ。

あろあろ国の首都アロランドでは、路地の店が一日のうちに何度も表情を変える。朝は豆の鍋と薄いパン、昼は具を選ぶ包み焼き、夕方には串焼きの煙。呼び込みの声が、次の食事の時間を知らせる。

朝の屋台「豆灯」は、早くから鍋を火に掛ける。薄いパンを添える簡素な食事だが、仕事に出る人びとはここで腹を満たす。昼を過ぎると「具待ち」の包み焼きが現れ、客は中に詰める具材を指差して注文する。

夕方の主役は串焼きの「煙三本」。焼ける匂いに足を止めると、店主が一串を差し出してくる。「見るだけなら無料だよ」と笑う。道端では芸人が三歩だけ踊り、周囲の客から笑いが起きた。

同じ路地でも、鐘が鳴るころには店の顔ぶれが入れ替わる。朝の豆灯を探して夕方に来ても、すでに店じまいだ。名物が何かと尋ねるより、いま何が焼けているかを見る方が早い。

あろあろ国の人口は33万8,200人、兵力は8万7,500人。戦争はしていない。交易も盛んだが、初めて訪れる人の耳には、荷の数より先に屋台の売り声が残る。

書評『三日目の名物』

アロランドの屋台の脇に積まれている薄い本『三日目の名物』は、店主の口上を笑う小品だ。新しく焼き始めた串に「三代続く秘伝の味」と名を付け、古い由緒があるかのように言い立てる。客は、三日でその話の綻びを見抜いてしまう。

面白いのは、騙された客が大騒ぎしないところだ。店主は由緒を取り下げ、客は改めて串を味わう。商いの口上は剥がれ落ちても、煙と香りは消えない。この落差に、商人の強かさと客の寛容さが出ている。

作品は短く、人物の掘り下げもほとんどない。それでも、名物を古い物語ではなく、今日食べてうまいものとして描く切れ味は鮮やかだ。長い説明より一本の串が勝つ。読み終えると、腹が減る。

見るだけ

朝には豆の湯気が立ち、
昼には包みの端を折る。
夕暮れ、串を焼く煙が
屋根の隙間へ上ってゆく。

鐘が鳴るたび店は替わる。
同じ路地を歩いたはずが
知らぬ匂いに足を止める。

「見るだけなら」と声がする。
見るだけだったはずなのに、
帰り道には紙包みがある。

編集後記

二週分のニュースを一冊に収めた。旧首都の名を別の町へ移す者があり、海辺の都市では工場が失われた。紙面を閉じるころ、アロランドの屋台が少しうらやましくなる。あちらでは、鐘が鳴れば看板を替え、次の料理を焼き始める。昨日と同じ場所にいても、今日の売り物は今日のものだ。新聞もまた、そうありたいと思う。